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【要約・書評】リーダーシップの旅

「リーダーシップのおすすめ本を教えてください」と、とあるMBA教授に聞いてみたところ、こちらの本を教えてもらいました。

リーダーシップの旅

『リーダーシップの旅』とは?

本書は、大学院大学至善館の創設者である野田智義氏と、リーダーシップ研究の第一人者である金井壽宏氏による著書です。
著者略歴を拝見すると、「アカデミックな小難しい本」の気配がしますが、読んでみると、そんなことはありませんでした。
割とくだけた書きっぷりで、著者たちが本音ベースでリーダーシップについて語っている、そんな本でした。

バッチリと体系的に整理されているわけでもなければ、「リーダーはかくあるべし」みたいなあるべき論が書かれているわけでもない。
「リーダーシップ」という言葉がいかに誤解されているか?リーダーシップの本質はどこにあるのか?
・・・こういった論点について、読者と歩調を合わせながら一緒に考えてくれる。非常に良心的な本です。

以下、こちらの図解メモに沿って、本書の学びを振り返ってみます。

リーダーは「結果として」なるもの

本書で繰り返し強調されていたメッセージ。

リーダーは「結果として」なるものであって、最初から「リーダーになろう」と思ってなった人はいない。

・・・というのは、リーダーには大きく3種類ありまして。
①選挙で選ばれたリーダー
②任命されたリーダー
③自然発生的なリーダー

このうち、本書は「①自然発生的リーダー」を主軸において、論を進めていきます。

リード・ザ・セルフ

第一段階は「リード・ザ・セルフ」。

つまり、自分が心から「こうしたい」と思うことからスタートします。

周りがどうとか関係なく、ピュアに「自分の願い」を心から叶えたいと思っている状態。

二人称でも三人称でもなく、一人称で語っている状態。ここからリーダーシップははじまります。

リード・ザ・ピープル

第二段階は「リード・ザ・ピープル」。

これは、「リード・ザ・セルフしているリーダー」の背中を見て、自発的に人がついてきている状態を指します。「自発的」というキーワードがポイントです。

例えば、上司と部下の関係を考えてみましょう。

部下は必ずしも、「自発的」に上司に従っているとは限りません。

指揮命令系統・権限が会社で定められているから、上司についていきているだけ。裏を返すと、指揮命令系統がなくなれば、部下はついてこなくなる。

・・・これは、リーダーシップを発揮できているとはいえません。

「権限がなくとも、自分についてきてくれるフォロワーがいるか?」が、リード・ザ・ピープルできているか否かの分岐点になります。

リード・ザ・ソサエティ

第三段階は「リード・ザ・ソサエティ」。

この段階までくると、「この世界、次世代のために、意味のあるものを残す=世代継承性」を原動力にできる状態とのこと。

さすがに、この段階の人の気持ちはよくわかりません。孫でもできない限り、世代継承性を原動力にできる日はこないんじゃないか・・・と、心がちっぽけな私は思ってしまいます。

ちなみに、世代継承性というか、「地球上の誰に対してもGIVE&GIVE&GIVEの精神になれる無敵状態」について解説している本があります。

それが『リーダーシップに出会う瞬間』という本。

この本は「成人発達理論」をテーマにしています。この理論では、リーダーシップが四段階に分かれており、第四段階の「エルダー」が聖人君主すぎてヤバいんです。
この段階まで来ると、他者のことを、自己の変容に貢献するものと捉えるようになるそうで。価値観としては、「人間性・慈悲心」といった精神を持っていて、「個と全体の双方の可能性を最大限に引き出す力」「その瞬間瞬間と共にいる力」「常に目の前の人と出会い直す力」「新しい自己への好奇心」を養うことができるとのこと。

・・・もはや超能力ですよね。

少し話がそれましたが、『リーダーシップに出会う瞬間』で語られている「成人発達理論」の論旨は、『リーダーシップの旅』と重なる部分が多かったように思います。

個人的には、この2冊には以下のような違いを見つけました。

どちらも甲乙つけがたい良書ですので、好みに合ったほうを選んでみてください。

リーダーに求められる4つの資質

「あんまり後付け的にリーダーシップについて論じたくない」といいつつも、何だかんだ「リーダーシップの4つの資質」みたいな後付け的な資質たちを教えてくれるのも、筆者の優しさというかサービスだなーと思います。

4つの資質・・・それは以下を指します。

  1. 構想力
    時代の流れを感じながら「見えないもの」を見ようとする力
  2. 実現力
    コミュニケーションによって「見えないもの」への理解・共感を得ていく力
  3. 意志力
    自分を動機づけし続ける力
  4. 基軸力
    やり続ける/やり遂げる/逃げない力
    トレードオフの意思決定を繰り返すことで鍛えられる

さて、ここで、繰り返し出てくるキーワードに気づかれている方もいらっしゃるでしょう。

「見えないもの」というキーワード。本書では何度も何度も登場します。

しかし、「見えないもの」とは何か?については、それほど語られていません。

 

ちなみに、私の解釈では「見えないもの=他人はスルーするが、自分にとっては見過ごせないもの」だと認識しています。

リーダーシップは、「見えないもの」を「見たい」と思うところからスタートする。

その「見えないもの」とは、周囲の人からするとどうでもいいことで、自分にとってはスルーできないもの。

では、どうやって、自分にとっての「見えないもの。かつ、見たいもの」を見つければいいのか?
・・・この論点にフォーカスしているのが、流行りの「アート思考」なんだと考えます。

リーダーシップは「一人称」で語れ。

自分勝手でいいから、まずは、自分にとっての「見えないもの。かつ、見たいもの」を見つけなさい。

・・・そんな学びを『リーダーシップの旅』から授かりました。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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