番外編

「論理よりも感情が大事」の本当の意味

はじめに

「論理よりも感情が大事だよ」

「正論じゃ通用しない。現実論を語ろうよ」

 

私がよく頂いたフィードバックは、この二言に集約されます。

私自身も、このフィードバックには納得していますし、日々改善に向けて努力しています。

 

しかしですね、最近気づいたことがあります。

凄く醜いと思われるでしょうが…

「Aさんから"論理よりも感情が大事"と言われると納得できるけど、一方でBさんから言われると何だかムカつくんだよな」と感じるようになったんですね。

 

「誰が言うかよりも、何を言うかが大切」だということは重々承知なのですが、それでも、あの人に「論理よりも感情が大事だよ」と言われると、何だか腹立たしい。

この醜い、モヤモヤした気持ちは何なんだ??

…と、ずっと悶々と考えていたところ、ようやく答えがわかりました。

読者のみなさんの足しになるかはわかりませんが、どうしてもこのスッキリ感をお伝えしたいので、ツラツラと書いてみたいと思います。

モヤモヤを2軸で整理してみる

モヤモヤしたとき、頭が混乱したときは、物事に「補助線」を引いてみると、案外スッキリすることが多いです。

今回解きたいモヤモヤは「"論理よりも感情が大事"と言われて、ムカつくときとムカつかないときがあるのはなぜか?」です。

このモヤモヤを晴らしてくれたのが、次の2本の補助線です。

  1. 「論理的に考えられる・正論を語れる」か「論理的に考えられない・正論を語れない」か

  2. 「感情を配慮できる・現実論を語れる」か「感情を配慮できない・現実論を語れない」か

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この2本の補助線から、4タイプの人物像が透けて見えました。

どんな人物像なのか、順に説明します。

①ただただ自分勝手な人

1人目は、「論理的に考えられないし、相手の感情に配慮できないタイプ」「正論も現実論も語れないタイプ」です。

自分が思ったことを、話したい順番で話してくる人。

就職活動のグループワークで、よく「クラッシャー」と呼ばれる人が、イメージとして近いかもしれません。

こんな人から「論理よりも感情が大切だよ」と言われたら、まあ腹が立ちますよね。

このタイプは論外です。長く語るのも時間の無駄なので、次に行きます。

②いわゆる「若いな」と言われてしまう人

2人目は、「論理的に考えられるけど、相手の感情に配慮できないタイプ」「正論は語れるけど、現実論を語れないタイプ」です。

私見ですが、こういったタイプには次の特徴が見受けられます。

  • ロジックが通っている方が偉いと思っている
  • 相手を論破することで、達成感を抱く
  • 0か100かで考えがち
  • 相手に反発されたときは、「なんで正論なのに伝わらないの」と思いがち
  • 「論理よりも感情が大事」だと言われがち

こういう人は、得てして「優秀な人」が多いです。

企画書などを書かせたら、筋の通った綺麗な資料が出来上がるはずです。

しかし、読み手には中々納得してもらえない。

なぜならば、「読み手=実際に動いてもらう人」の気持ちを考え抜けていないから。

ビジネスは「動いてもらってなんぼ」です。

いくら正論でも、人は必ずしも動いてはくれないのです。

 

別に相手も意地悪をしているわけじゃありません。

相手も「頭ではわかっている。とはいえ…」と悶々としているはずです。

この「とはいえ」の部分を考え抜けるかどうかが、1つの壁だと思います。

論理的に考えすぎる人は、この「とはいえ」の壁にぶち当たります。

何度も「論理より感情が大事」と言われ続けて、ムカつきながらも日々苦しみながら成長していかないといけない…

しかし、この壁を超えると、「正論も現実論も語れて、人を動かせる人」になれるはずです。

③「論理よりも感情」の意味をわかってそうでわかっていない人

個人的には、このタイプの人には「論理よりも感情が大事」「正論よりも現実論が大事」なんて言われたくありません。

言われると、イラっとします。

なぜか?

それは、このタイプの人は「ビジネスパーソンとしての基本やお作法から逃げている」からです。

ビジネスの基本は、やっぱり「論理が通っているかどうか」だと思います。

なぜならば、どんなに綺麗事を並べても、ビジネスは「稼ぎ続けるメカニズム」を作ってなんぼだからです。

「稼ぎ続けるメカニズム」を特定して仕組み化するためには、論理的に考える力が欠かせません。

 

なので、「せめて最低限、論理的に考えること」は、ビジネスの世界では、1つのマナーだと思うんです。

そのマナーもできていないのに、「論理よりも感情が大事」なんて言われても、1mmも響きません。

 

④「論理よりも感情」の意味を身に染みてわかっている人

最後の4人目は、「論理よりも感情が大事」だということを一番身に染みて分かっている人です。

この人はまず、誰よりも論理的に考え抜く努力をされていると思います。

そして、「論理的に考えるだけではダメ」だということもわかっているので、徹底的に相手の心情を理解しようと努めます。

  • 今、相手はどんな景色が見えているのか
  • 相手はどんな重圧と闘っているのか
  • 自分の提案で動いてもらうときに、相手にどんな負担がかかりそうか

こうした論点も手を抜かずに考え抜ける人が、「真に優秀な人」なんでしょう。

この人が語る「論理よりも感情が大事」という言葉は、重みが違いますよね。

私も、こういう次元を目指して、日々修行を重ねたいと思う次第です。

「論理よりも感情が大事」の本当の意味

だいぶまとまりのない文章を書いてしまいましたが、以上の話を踏まえると…

「論理的に考え抜くことは当たり前。そのうえで、いかに"とはいえ"の部分を考え抜くかが大事」

これこそが、「論理よりも感情が大事」の真の意味だと思います。

 

「当たり前だろ」と言われそうですが、私はこの言葉の真の意味を知るのに5年もかかってしまいました。

5年もかかってしまいましたが、今のうちに気づけて良かったです。

いつか自分と同じ悩みを持つ人間に「論理的に考え抜くことは当たり前。そのうえで、いかに"とはいえ"の部分を考え抜くかが大事」と胸を張って語れるよう、精進したいと思います。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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