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【要約・書評】『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』サイモン・シネック

この本で解ける疑問は?

  • どうしてAppleやマイクロソフトは、今もイノベーティブなの?
  • 自社やブログのキャッチコピーが刺さらない…どうして?
  • 組織やチームに、なぜ理念が必要なの?

『WHYから始めよ! インスパイア型リーダーはここが違う』って?

この本は、学生時代にサークルの運営をしていた際、「そもそも、理念とはなぜ必要か?」と問われ、答えに窮したときに、出会った本です。

上記の疑問にシンプルに答えてくれた本書との出会いは、今でも忘れられません。

その感動を少しでもお伝えしたく、改めて読み直して整理してみましたので、このビジネス書を紹介させてください。

-Why-なぜ書かれたのか?

本書は、次の文章からスタートします。

世の中には、「形式上のリーダー」と「本物のリーダー」がいる。
「形式上のリーダー」は、権力のある座に就いていたり、影響力をもっていたりする。
いっぽう「本物のリーダー」は、私たちを奮い立たせる。

個人であろうが、組織であろうが、私たちは
従わざるをえないリーダーではなく、従いたいとみずから望むリーダーについていく。
私利私欲のためではなく、私たちのために先導してくれるリーダーに従う。

本書は、人々を感激させ、奮起させたい、つまりインスパイアしたいと願う人、自分をインスパイアしてくれる人物を見つけたいと願う人のための本である。

どうやら、インスパイアや鼓舞という言葉がキーワードのようです。
「周りが自発的に動きたくなるような"鼓舞の仕方"を伝えること」が本書の目的と読み取れます。

-What-なにをすべきか?

では、本書がいう「鼓舞の仕方」とは、いったい何なのでしょうか?
その答えは、本書のタイトルである「WHYから始めよ」にありました。
図1をご覧ください。

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図1(45ページより引用)

筆者はこの図を「ゴールデンサークル」と呼んでいます。
自然界の秩序を示す「黄金比」に感銘を受け、着想を得て名付けたそうです。

このWHY~WHATについて、意味合いを説明します。

  • WHY:理念や信念、志
    例)ビジョン、経営理念など

  • HOW:WHYの実現のための行動
    例)計画や独自の技術など

  • WHAT:HOWの結果
    例)製品やサービスなど

意味合いを見てもわかる通り、WHYは本質的なもの、WHATは表層的なものを表しています。

では、意味合いはわかりましたが、「WHYから始めよ」とは、具体的にどのように行えばよいのでしょうか?

-How-どのようにすべきか?

ここで、本書の「ペライチ」を図2に示します。

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図2

WHYから始まらない世界

まず、具体的なイメージを掴むためにも、図2の「例」をご覧ください。

われわれは、すばらしいコンピュータをつくっています。
美しいデザイン、シンプルな操作法、取り扱いも簡単。
一台、いかがです?(48ページ)

これは、WHAT(すばらしいコンピュータ)から始まっている例です。
他にも、下記のような例を挙げています。

「当法律事務所では、名門大学で学んだ弁護士が貴社のお役に立ちます。クライアントには大手一流企業が名を連ねています。どうぞ、弊社にご連絡を。」(49ページ)

これも、WHATから始まっていますね。
筆者曰く、多くの大企業は、このWHATから始まる宣伝文句を標準としているそうです。

このような「WHATから始まる」パターンでは、「操作」によって人が動きます。
「操作」とは、価格を下げる、プロモーションを行う、恐怖心を利用する、周囲と同じ行動をとるように仲間集団から圧力をかけるといった方法を指します。

こうした方法は、確かに、「一回きりの取引・行動」を促すには最適です。

ですが、「長期的な関係」を築くには、役に立ちません。

WHYから始まる世界

これも、イメージを膨らませるためにも、図2の例を見ていきましょう。

現状に挑戦し、他社とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。
製品を美しくデザインし、操作法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。
その結果、すばらしいコンピュータが誕生しました。
一台、いかがです?

いかがでしょう?さっきの例より、買いたくなりませんか?

実はこの例こそ、Appleが発している広告そのものなのです。

特徴的なのは、「現状に挑戦し、他社とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。」というWHYから始まっている点。

このような「WHYから始まる」パターンでは、「鼓舞」によって人が動きます。
「鼓舞」とは、人を奮起させて、やる気を起こさせる方法を指します。

こうした方法は、二回以上の取引や、忠誠心の伴う長期的な関係に有効です。

「人はWHATではなく、WHYに共感し、購入する」と筆者は言います。
確かに、WHATは時代によって変わっていきますが、WHYは時代関係なく不変です。

このように、目に見えないWHYを明確に示すことで、そのWHYに強く共感する者がフォロワーとなりHOWによって支えてくれる。
このように動いているチームや組織は、いつまで経っても強いのでしょう。

 

学び

本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。

“偽”目的に気づく

「大規模システムの構築」

「業務プロセスの標準化」

プロジェクトの目的に、上記のようなキーワードを見かけることはありませんか?

実は、私がコンサル1年目のときに、プロジェクトで見かけたキーワードをそのままひっぱってきました。

いわゆる、「目的のふりをした、"偽"目的」です。
「パッと見、それっぽいところ」が、これらのキーワードの質の悪い点です。

当時の私は、モヤモヤを抱きつつも、プロジェクトに忙殺され、上長に抗議することなく過ごしてしましました。
今では、すごく後悔しています。

 

なので、コンサル2年目からは、"偽"目的を見つけると、「システムを構築して、何を実現したいんでしたっけ?」「標準化すると、どうなるんでしたっけ?」と問うようにしています。

こうした議論を逃げずに行うと、目的を腹落ちさせて、納得感を持って仕事に臨むことができるようになります。

納得感があるのと無いのとでは、毎朝ベッドから出て通勤するときのスムーズさが断然違います。
(納得感の有無に関わらず、毎朝ベッドから出るのが憂鬱になるときもありますが…)

明日から取れるアクション1つ

  • 企画や資料の目的が、本当に「WHY=信念や志」になっているか、見直してみる

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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