キャリア マインドセット 書評

【要約・書評】『働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書』木村 勝

この本で解ける疑問は?

プロローグからそのまま引用しますと…

  • このまま何の疑問も持たずに会社の敷いたレールの上を歩んでいいのだろうか?
  • 年を取って会社との縁が切れたら自分は何をして稼いでいくのか?
  • 親の介護をしながら、今のキャリアを継続できるのか?
  • 役職定年で年収はいくらになり、定年再雇用では年収はどこまで下がるのか?
  • これからも毎日朝晩、満員電車に乗り続ける人生で本当に後悔はないか?
  • 年長者にも容赦ない年下の上司と果たしてうまくやっていけるのか?

(1ページ)

…という種々の疑問を、本ビジネス書は解消してくれます。

『働けるうちは働きたい人のためのキャリアの教科書』って?

「将来、自分が向き合う課題の予習をしておきたい」

これが本ビジネス書を手に取った理由です。

著者が「中高年専門ライフデザインアドバイザー」という肩書であることからもわかる通り、本書は「40代を間近に控えた、あるいは定年を控えたビジネスパーソン」がターゲットです。

おそらく、本書が発行されたタイミングと、私が40代を迎えるタイミングでは、取り巻く環境がガラリと変わっているはず。
2030年、2040年に求められるキャリア戦略は、本書の内容とは全く違うものになっている可能性もあります。

しかし、将来のキャリア戦略を描くためにも、その下地となる知識が必要です。
その知識補充のためにも、本書と向き合ってみようと思います。

-Why-なぜ書かれたのか?

本書のプロローグは次の文章で締めくくられています。

「意思あるキャリア選択と躊躇なき行動」により、「働けるうちはいつでも働ける」人生を実現すること。これが本書のテーマです。

それでは新たなキャリアへの第一歩を本書とともに踏み出しましょう。

(7ページ)

つまり「エイジレスに働けるようになるために、どのような選択肢があり、どう行動していくべきか?」という問いに答えることが本書の目的といえます。

-What-なにをすべきか?

先述のテーマを読み解くに、「人生90年時代に取りうるキャリア選択肢を知り、適切に選ぶこと」が求められます。

そのためには、選択肢を洗い出し、各選択肢の特徴をおさえる必要があります。

そこで、「ビジネスパーソンが選びうる選択肢とは?」という問いを起点に、「ペライチ」を図1のように展開してみました。

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図1

どうやら、キャリアの選択肢は次の4つがあるようです。

  1. 今の会社に勤め続ける
  2. 転職する
  3. 出向する
  4. 独立起業する

ここからは、私の個人的な関心事を軸に、「読まない箇所」を切り捨てていきます。

まず「1.今の会社に勤め続ける」は切り捨てます。
キャリアチェンジを前提に、外資系コンサルティング会社でキャリアをスタートさせたこともあり、1という選択肢は私のキャリア観とは対極にある考え方だからです。

次に「2.転職する」も切り捨てます。
本書の目次を読んだ時点で、転職の考え方については『転職の思考法』に包含されるな、と判断したためです。

また「3.出向する」も切り捨てます。
部署異動もしくは転職との「本質的な違い」が見いだせないからです。

したがって、「4.独立起業する」を詳しく見てみます。

-How-どのようにすべきか?

ここで「4.独立起業する」にズームインしてみます。

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図2

「避けては通れない5つのリスク」…気になりますね。

  1. 顧客獲得のリスク(お客さんがいなければ無収入)
    商品(サービス)を買って下さるお客さんがいなければ収入はゼロです。顧客の確保が最大のポイントです。
  2. 契約打ち切りのリスク
    せっかく結んだ契約も提供サービスレベルが低いと契約更新とならず、スポット契約となってしまいます。契約更新時期には、常にハラハラすることになります。
    雇用保険も適用外ですので仕事が無くなっても失業手当の給付は一切ありません。
  3. 体調不良などで稼働できないリスク
    サラリーマンには、休職規定(多くは正社員対象ですが)、また病気で働けなくなった場合でも健康保険による傷病手当金の支給があります。独立するとこうした手当金は一切ありません。
  4. 業務上傷病等に関するリスク
    サラリーマンには通勤中の事故を含めて労災保険の適用がありますが、個人事業主にはありません。仕事途中で交通事故にあってもそれは自己責任です。
  5. 組織に属さないことによる(孤独感など)メンタル面でのリスク
    会社という組織で働くのではないので、全部自分で責任を持ち、自分で判断しなければなりません。長年組織にいた人間にとっては、こうした孤独感はメンタル面での大きなリスクです。

(132ページ)

…やや絶望的な気持ちになりますね。

しかし、リスクへの対処というのは、まずその存在を「認識」することから始まります。
しかも、いかに世の中が便利になろうと、今述べたようなリスクとは向き合う必要があるでしょう。

 

…と、私の興味が赴くまま、本書を紹介して参りました。
しかし、本書の本当の価値は、著者の「25年にわたる人事畑の経験」に裏付けされた豊富な知識と経験です。

「日系大企業で20年以上の人事経験を積んだ人の本」は、私が知る限り、本書だけです。

冒頭に述べた疑問の答えを知りたい方は、是非手に取ってみてはどうでしょう。

 

学び

本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。

独立起業に向けて「今から」準備できること

せっかく「独立起業の5つのリスク」を知ることができたわけですから、それぞれに対して、自分なりに対処法を考察してみます。

1.顧客獲得のリスク

人脈を蓄えておくことはもちろんですが、今のうちから「マーケットの要求をくみ取るクセ」をつけておいたほうが良いでしょう。

「顧客は何を求めているか?」を知るためにも、「マーケットの反応をダイレクトに受け取ることができる活動」として、ブログを継続する所存です。

2.契約打ち切りのリスク

これについては、まずは「ビジネスモデルのパターンをストック」することから始めてみます。

ビジネスモデルによって、契約の在り方も大きく変わるためです。

いきなり「打ち切られにくい契約とは?」みたいな各論からスタートするのは避けたいところです。

3.体調不良などで稼働できないリスク

今のうちから投資して、「資本」である身体を強化して備えるべきでしょう。

そのためにも、まずは「健康」についての方法論を学ばないと、ですね。
引き続き、下記のような記事も量産しつつ、健康について学んでまいります。

4.業務上傷病等に関するリスク

労災リスクを最小化するためにも、あくまで知的労働に振り切る所存です。

極力身体を動かさないためにも、「通勤」「顧客訪問」のないビジネスを考えないといけません。

先ほどの「ビジネスモデルのストック」に加え、「リモートワーク」「フリーランス」をはじめとしたキーワードにもアンテナを張る必要がありますね。

5.組織に属さないことによる(孤独感など)メンタル面でのリスク

今のうちから、個人的なつながりを大切にし「信頼残高」を地道に積み立てる必要がありますね。

「ただ馴れ合う仲間」ではなく「共に問題解決を助け合える仲間」をつくれるように、手を抜くことなく人付き合いをしていく所存です。

ただ、人見知りゆえ、「数」を追求する戦略は避けたいところです。

明日から取れるアクション1つ

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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