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【要約・書評】『エフォートレス思考』グレッグ・マキューン

2014年に発売されて、いまではAmazonでも2000以上のレビューがついている本があります。

その名も『エッセンシャル思考』。

この本のメッセージを一言で要約するならば「99%のムダを捨てて、1%の"本当にやるべきこと"に集中しましょう」という感じでしょうか。

以前は「いただいたチャンスには全て応えないと」「できることは全部やらなきゃ」と思っていましたので、『エッセンシャル思考』と出会ったときは、度肝を抜かされたのを覚えています(大袈裟ではなく、本当に)。

※『エッセンシャル思考』の書評が気になった方は、↓の記事もぜひご覧ください。

【書評】『エッセンシャル思考』グレッグ・マキューン


あの感動体験から7年が経過した今、待望の新刊(続編?)が登場しました。

エフォートレス思考』です。

今度は、この本の魅力に迫ってみます。

エフォートレス思考とは?

エフォートレス思考』はいったいどんな本なのか?

この問いに答えるためにも、前著の『エッセンシャル思考』との違いを見てみましょう。

前著『エッセンシャル思考』との違い

まず、エッセンシャル思考とエフォートレス思考の違いを先に述べますと、

  • エッセンシャル思考
    • 「やることがたくさんあって困る」ときに使うもの
    • 「何をやるか」を見極めるのが、エッセンシャル思考である
  • エフォートレス思考
    • 「やることを絞っても、まだ忙しい」ときに使うもの
    • 「どのようにやるか」を極めるのが、エフォートレス思考である

こんな違いがあります。

エッセンシャル思考は「What(何をやるか)」、エフォートレス思考は「How(どのようにやるか)」を語っている、ということですね。

エフォートレス思考のコンセプト

そんなエフォートレス思考のコンセプトを言い表すならば・・・

「無駄な努力を0%に、成果を100%に」

この一言に集約されます。


これまで

「成功するためには、多少無理をしてでも頑張らなければならない」

「何をやるにしても、全力を尽くしなさい」

「苦労の先にしか、得られるものはない」

と教わってきた私たちにとっては、目から鱗が落ちるコンセプトではないでしょうか。


しかし同時に、このコンセプトを目にしたとき、正直、私は次のように感じました。

「いやいや、きれいごとを言わないでくれよ」

「結局は、努力を惜しんではいけないでしょ」

と、斜に構えていたんですね。


ただ、本をさらに読み進めると、上に書いた疑念も吹っ飛んでいました。

この本には、「きれいごと」なんて一言も書かれていなかったんです。

エフォートレス思考を使うためには、まずは「精神」を整えること

では、具体的に『エフォートレス思考』にはどんなことが記されていたのか?

私なりの言葉で、学びを交えながらご紹介したいなと。


まず、エフォートレス思考は、「精神」「行動」「しくみ」の三層構造で成り立っているそうです。

この三層構造を作り上げるためにも、最初は「エフォートレスな精神」を培う必要があります。


エフォートレスな精神とは「肉体的にも精神的にも疲れのない状態」を指します。

要は「余計な力みを取りましょう」ということかなと。


では、どうすればエフォートレスな精神に辿り着くのか?

大きく5つの要素を兼ね備えておく必要があるそうです。

  1. INVERT(転回)
    「どうすれば努力を最小化できるか?」を考える。特に、何か大変だと感じたときは「やり方がおかしくないか?」と疑う姿勢を持っておくこと。
  2. ENJOY(遊び)
    仕事のプロセスに「楽しみ」を組み込めないかを考える。
  3. RELEASE(解放)
    「頭の中の不要なモノ」を空っぽにする。特に、ネガティブな感情を、全力で頭から取り除くこと。
  4. REST(休息)
    何としてでも「休み=何もしない時間」を確保する。
  5. NOTICE(集中)
    「今、ここ」に全力で集中する。

確かに、この5つを常々意識できれば、目の前の仕事を力みなく処理できそうです。

しかし、人によっては「意識はできても、行動に落とすのが大変」と思う方もいらっしゃるでしょう。

・・・ご安心ください。

本書には、「行動への落とし方」「しくみ化して、無意識にエフォートレスな行動を取れる状態にする方法」が惜しげもなく記されています。

それも、「読んだ次の日から、行動に移せる」レベルで、しっかりと書かれています。

エッセンシャル思考』と双璧をなす、これまたベストセラー確実の一冊ですね。


ここまでの話を、手書きのメモでもまとめておこうかと思います。

よろしければ、↓のメモもご活用ください。

一方で、エフォートレス思考の「見せ方」には注意が必要

ここからは、完全に私の所感です。

最小限の努力を良しとする、エフォートレス思考。

これを実践しようと思ったときに、どんな大変さが待ち受けていそうか。


例えば、

「できることは、全部やらなくてはいけない。あのときこれもやっておけば・・・という後悔を残してはならない」

「重要なことは、多少無理をしてでも、献身的に取り組まねばならない」

こんな職場もあると思うんです。


私自身、コンサルタントとして色々な企業の現場を目にしたり、友人から職場の話を聞いたりしてますが、

やっぱり↑みたいな雰囲気のところ、結構あるんですよ。


そんな雰囲気の職場で、

「これからはエフォートレスだ。最小限の努力でやっていきましょう」

「私はA案がいいと思います。なぜならば、他の案よりもA案が最も工数が少ないからです」

なんて言おうものなら・・・もう結果はわかりきっていますよね(笑)


だいぶ極端に書きましたが、要は「エフォートレス思考はいいことだ」という共通認識がない場所では、注意してエフォートレス思考を使う必要があります。

例えば、内心では「最小の努力で取り組めるA案で進めたいな」と思っていたとしましょう。

だとしても、職場の人間に説明をするときは「ROIの観点で、A案が最適だと思います」みたいな感じで、しっかり「大義名分」を作りこんでおいたほうがよいでしょう。


この「他人への説明用に、大義名分を作りこむスキル」、めちゃくちゃ大事だと思うんですよね。

特に、「献身的に労力を割いた人を評価したがる職場」でエフォートレスに過ごしたいのであれば、もはや必須スキルじゃないかと。

そんなことを感じさせられた一冊でもありました。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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