スキルセット 書評 話す

【要約・書評】頭のいい人が話す前に考えていること

「この人の話、綿菓子みたいにスカスカだな」
「この人は、自分の言葉で話しているな」
この2つの違いは、いったいどこから来るんだろうか?やっぱり話す練習を繰り返すしかないのかな?
・・・と思っていたところ、ある本が「1か月で9万部突破」と話題になっていたので、手に取ってみました。

頭のいい人が話す前に考えていること』です。

『頭のいい人が話す前に考えていること』とは?

本書は、ビジネスメディアBooks&Appsを運営されている安達裕哉さんの本です。
※ちなみに、こちらのメディアに少しですが、私の記事も掲載いただいています。よろしければ。

ついにビジネス書中毒に終止符を打ってくれる本と出会えたが、アプローチが予想の斜め上だった。

実は安達さんの本は、読むのは2回目でして。
1回目は『「仕事ができるやつ」になる最短の道』。
ちょうどコンサルファームに新卒入社してすぐのときに読みましたが、今でも読み返すくらい、自分の中では「超良書」の位置づけです。

そんな安達さんが書いた本だから、きっと、その辺の薄っぺらい「話し方本」よりも良いことが書いてあるんだろう。
・・・と思って読んでみたところ、期待通りというか、期待以上の内容でした。

頭のいい人が話す前に考えていること
この本には、「抑揚をつけて話しましょう」「型を決めて話しましょう」みたいな小手先のテクニックは一切書かれていません。
本書の斬新なところは、話し方ではなく「話す前の、頭の使い方」にフォーカスしている点です。

話の良しあしは「話す前の頭の使い方」で決まっている。
話し方自体は「あの~、えっと~」みたいに下手っぴでOK。
そんなスタンスが、本書の見どころです。

本書は、2部構成で書かれています。

  • 1部:頭のいい人が話す前に考えていること―「知性」と「信頼」を同時にもたらす7つの黄金法則
  • 2部:一気に頭のいい人になれる思考の深め方―「知性」と「信頼」を同時にもたらす5つの思考法

中でも、「7つの黄金法則」のところは、ぜひチェックリストとして永久に活用したいと思いまして、
自分なりの理解もふまえて、以下のように整理してみました。

①とにかく〇〇するな
すぐに口を開かない。脊髄で反射しない。6秒待ってから口を開く
6秒の間に「これを言うと相手はどう反応するか」を想像する

②頭の良さは〇〇が決める
相手の認識・反応・関心を想像してから話す。コミュニケーションの主役は相手である

③人は「ちゃんと考えて〇〇〇〇人」を信頼する
「それっぽいが、中身のない話」はしない(=賢いふりはしない)
自分の有能さを示すためではなく、相手のために頭を使うこと

④人ではなく〇〇と戦え
議論の勝ち負けは1mmも気にしない。本質的な課題を見つけて解決したもん勝ちである

⑤伝わらないのは話し方でなく〇〇が足りないせい
話す前に「なぜ?」「具体的に?」と反芻したうえで話す

⑥知識は〇〇のために使ってはじめて知性になる
簡単にアドバイスは意見をしない。相手の話を整理して、判断を助ける

⑦承認欲求を〇〇〇側に回れ
他者をほめつつ、自慢は一切しない。ただ結果で示し続ける

いずれも、コミュニケーションの原理原則そのものだといえます。

瞬発力で話をしない

本書を読んでみて、改めて重要だと思ったのは、瞬発力で話をしないこと。
これは私自身、コンサル時代に指導いただいたことでもあります。
主に2つ、思い出がよみがえってきました。

「慣れてもないのに、会議でアドリブで説明するな」

1つ目は、コンサル1年目でのシステム導入プロジェクトのこと。
慣れないシステム用語と向き合いつつ、何とか説明資料を作りきり、会議に臨みました。
このときは「ま、資料もあるし、搔い摘みながら説明すればいっか」くらいに思っていました。

しかし、いざ会議になると、その場の参加者の顔色や理解度を見ながら話す内容を変える、なんてアドリブができるわけもなく。
ただただ、資料に書いていあることを読み上げるだけ。しかもシステム用語も100%理解しているわけでもなかったので、説明の棒読み感が半端じゃない。
結局、説明の途中で上司がカットインして、私の出番はそこで終了。

その会議後に、上司にこんなフィードバックを受けました。

お前、いつからアドリブで話せるくらい、偉くなった?慣れてもないのに、アドリブで話すな

資料のどのページは、どんな言葉遣いで話すか。相手がこう反応したら、こういう補足をしよう・・・そんなことを、語尾までこだわったうえで、ちゃんと練習してから話せ

資料を見なくても全部話せるくらい頭に叩き込んでから、会議にこい

・・・なかなかマッチョなご指摘です。
しかし、「話す前に、考え抜いて、言葉も練ってこい」というメッセージは、今回の『頭のいい人が話す前に考えていること』にも通ずるものがあります。

その出来事以降、基本的にはどんな会議であれ、数分でも資料を説明する練習したうえで臨むように。
この効果かわかりませんが、説明時に「よくわからない」と言われることは、ほぼなくなりました。

「脊髄でしゃべるな。一回、脳内を通してから話せ」

2つ目の思い出、これもさっきと同じプロジェクトでの出来事です。
クライアントから「この調査、明日までにお願いできるかな?」と依頼されたときのこと。
クライアントファーストだ!と教わっていたので、”反射的"に「はい、わかりました」と返事をしました。
しかし、よくよく振り返ると、私には他に優先すべきタスクがあって、とても依頼された調査を実施できる時間もありませんでした(よくよく振り返らなくてもわかるっしょ…と今では思いますが)。
これがダメだったようで、上司からこっぴどく怒られたわけです。

クライアントから依頼があったとき、お前、脊髄で返事したろ?ちゃんと脳内通したか?
依頼をされたときに反射的に"やります"というのは、"こいつ仕事できないな"と思われたくない…そんな本能が働くからだ

依頼をされたときは、まず返事する前に、10秒でいいから、

  • 他に自分が抱えているタスクは何か?
  • 依頼されたタスクはどんな工数感になりそうか?その工数感に1.5倍掛けすると、どれくらいかかりそうか?

…この2点を想像してみてくれ。もし10秒で想像できないのであれば、「すみません、後で回答するので、いったん待ってください」と持って帰ってきてOK。
変に仕事を安請け負いして、あとで「できませんでした」と言われるほうが、クライアントからすると一番迷惑だ。
仕事を安請け負いするやつは、「クライアントファースト」とかいいつつ、実は「自分の保身ファースト」なんだよ。

依頼をされたときは、脊髄で返事せずに、脳内を通してから返事する。
これも、『頭のいい人が話す前に考えていること』の教えに通ずるものがあります。

以上のように、コンサル時代にビシバシ言ってもらった教訓が、キレイに言語化されて、凝縮されていたのが、今回の本でした。
ChatPGTが暴れまわろうと宇宙人が現れようと、変わらず大事になるエッセンスが詰まっている本でしたので、超オススメです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

-スキルセット, 書評, 話す

© 2024 BIZPERA(ビズペラ)-ビジネス書評はペライチで