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【要約・書評】『OPEN(オープン): 「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る』

オープンな姿勢、つまり「自分にないものを取り入れる姿勢」を持っておけば、発展し続けることができる。

閉鎖的なのはよくない。とにかく、オープンであることが大事。

・・・そんな主張が、488ページに渡って一貫して述べられています。

こう書くと「当たり前じゃないか」とツッコミたくなりますよね。

私も、本書のタイトルを読んだ瞬間は

  • ああ、どうせ「オープンであることが大事」とか言いたいんでしょ。そんなの読まなくても知っているよ
  • しかも、その主張をするためだけに、いろんな小難しい引用とかデータをたくさん使って、膨らませまくった本でしょ

と、バカにしていました。

でも、そんな本が発売時に即重版が確定したそうです。

いったいこの本のどこに、そんな魅力が含まれているのか?

不思議で不思議でしょうがなかったので、重い腰をあげて、本書を読んでみました。

・・・結論、めちゃくちゃいい本でした。

『OPEN(オープン): 「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る』とは?

著者は、スウェーデンの作家・歴史家のハン・ノルベリ氏です。

歴史家ということもあり、本書では史実が冗談抜きで100個くらい引用されています。

そんな本書は、

第1部:オープン

第2部:クローズド

と、非常にシンプルな2部構成で書かれています。


簡単に「オープン」と「クローズド」の意味を整理しておくと

  • オープン
    • 自分にないものを取り入れる「交易者」としての側面のこと
    • オープンだと、不確実性が多いが、問題解決や改善が進みやすい
  • クローズド
    • 異質なものを退けて自分を守る「部属人」としての側面のこと
    • クローズドだと、統制や確実性を与えてくれるが、問題解決や改善は進みにくい

こんな感じですね。

まあ、ここまでは当たり前の内容ですよね。特に真新しい気づきはありませんでした。

本当に正直な気持ちで綴っていくと、第1部「オープン」からは、ぶっちゃけ得るものがあまりありませんでした。

もちろん、歴史の引用がたくさん出てくるので「へー、こんな史実もあるのか」といった気づきは多い。

でも、それだけなんですよ。「へー」で終わってしまう。

知らなかった史実を知れたのは嬉しい。

でも、言いたいことは、結局「オープンだと発展できるよね」、これだけ。

だから、200ページくらいかけて第1部を読んだわりに、手応えがあまりない。

こんな感想を抱きました。

ちなみに「オープンだと発展できる」というエッセンスを深く学びたいのであれば、個人的には塩野七生氏の『ローマ人の物語』がオススメです。

私が知る限り、オープン化で発展した国家として最も代表的なのがローマです。

「知力では、ギリシア人に劣り

体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り

技術力では、エトルリア人に劣り

経済力では、カルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人である」と自らが認めていた。

ローマ人の物語Ⅰより

そんなローマ人は、2000年も前に、すでに江戸時代と同レベルの生活水準を実現させていました。

その最も大きな要因として考えられるのが「オープン化」です。

自分たちは何事も周りに劣っているから、どんどん色んなものを取り入れよう。

その姿勢を貫いた結果、ローマ人は長きにわたり繁栄する巨大な国を作り上げた。

・・・と、こんなことを学べるので、本当にオススメです。


さて、話がめちゃくちゃ逸れちゃったので、本題に戻します。

第1部からは、学びがあまりなかった…って話でしたね。

では、第2部はどうかというと、これが学びに溢れていました。

その中でも、2つご紹介します。

学び①クローズドになるのはアカン!とわかっていても、クローズドになってしまう理由

1つ目は、クローズドが発展を妨げることを理解していながらも、クローズドになってしまう理由についてです。

オープンがいいと頭でわかっているのに、なぜクローズドになるのか?

それは、人間に次のバイアスが備わっているからです。

  • 内集団への愛
  • ゼロサム思考
  • 未知のものへの恐れ

1つ目の「内集団への愛」は、気づいたら発生していますよね。

オープンにどんどん仲間を受け入れていくと、次第に仲間に対する愛情が高まってくる。

そうすると、「身近にいる人のほうが、見知らぬ人よりも大事」というバイアスが働きやすくなる。

こうやって、「俺たちvs奴ら」みたいな枠組みで捉え始めた瞬間、クローズドになっていく。

こんなバイアスです。


2つ目の「ゼロサム思考」は、「自分たちが貧しいのは、誰かが搾取しているから」と考えることです。

本当は経済はプラスサムの世界だけど、人間はどうしてもゼロサムに物事を捉えてしまう。

だから、「奪われるくらいなら、奪っちまえ」的な思考になってしまう。


3つ目の「未知のものへの恐れ」。

新しいものを取り入れなきゃとは思いつつも、変化を嫌ってしまう。

そんなバイアスです。


以上のバイアスを消し切るのは難しいでしょう。

ですが、バイアスの存在を「自覚する」ことはできるはずです。

バイアスを自覚しておけば、「あ、自分は今、身内をひいきしているな」とか「あ、自分は今、変化を恐れているな」とメタ認知できます。

これら点を学べたのは、大きな収穫でした。

学び②「あいつはクローズドだ」と言った瞬間に、自分もクローズドになる

2つ目の学びはこれです。

これが、本書を読んでみての一番の学びかもしれません。

私は職業柄、ITツールの活用を推進することが多いです。

ただ、新しいITツールを導入しようとすると、必ず抵抗にあいます。

「またツールの使い方を新しく覚えなきゃいけないの?」

「そんなツール入れなくても、今のままで困っていないよ」

と、こんな感じです。


そのときに、「あいつら保守的だな、クローズドだな」と思うわけですよ。

でも、そう思った瞬間に、「俺たち=オープンなやつ」と「あいつら=保守的でクローズドなやつ」と線引きをしてしまっています。

保守的な人の意見を拒絶しようとしている。

これだと「どんな意見も拒絶せずに受け入れる」という、オープンさの根幹と矛盾します。

つまり、クローズドになっちゃっているわけです。

・・・これ、本当に要注意ですよね。

たぶん、ほとんどの人は「自分は寛容でオープンである」と思っているでしょう。

でも「あいつはクローズドだな」と思った瞬間に、自分もクローズドになってしまう。

だからこそ、何事も否定をせず、いったん受け入れてみる(賛成するわけでも、迎合するわけでもなく)。

そのスタンスが大事なんだと、改めて学びました。


以上、たくさんの学びを得たわけですが、最後にメモも添付しておこうかと思います。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

この本、オススメです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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