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レビュー『創造力を民主化する―たった1つのフレームワークと3つの思考法』

先に言っておきます。

この本は、最近読んだ「思考法本」の中で、一番感動した本です。

なぜなら、思考法の中でもめちゃくちゃ難易度の高い「抽象化」「アナロジー」「発想の転換」などのキーワードを、これ以上なくわかりやすく解説しているからです。


というのも、どの本にも「抽象化が大事だ」「アナロジー思考を使って、一見すると関係ない物事同士を繋げることが大事だ」と書いてあります。

でも、その具体的な方法(しかもビジネスで使える方法)まで、踏み込んで書いてある本って、あんまり見かけませんよね。

だから、抽象化とかアナロジーとか常識を疑うとか。
そういった「高度な思考技術」は、ごく限られた地頭のいい人しか知らなかったわけです。

しかし今回、「創造力を民主化する」というテーマで、高度な思考技術を体系的に整理してくれた本が出版されました。

それが、本書『創造力を民主化する―たった1つのフレームワークと3つの思考法』です。

Youtubeを更新しました

『創造力を民主化する』とは?

本書は、経済産業省やBCG(世界トップのコンサル会社)出身で、現在はVISITS Technologiesでデザイン思考テスト事業の責任者をされている永井翔吾氏が執筆された本です。

VISITS Technologiesという企業のHPを見ると「私たちは世界で初めて人の“創造性“を定量化することに成功したイノベーションテック・スタートアップ企業です」と記載されています。

「創造性」と「ロジック」を兼ね備えた、最先端の方の知見がこの本には詰まっているんじゃないか・・・そんな期待が膨らみますね。


さて、そんな期待に胸を膨らませながら、「はじめに」を読んでいきます。

すると「エレベーターの話」が書いてありました。

要は

  • エレベーターが数台しかない高層ビルでは、「エレベーターの待ち時間が長くてイライラする」という苦情が発生
  • その問題の本質は「エレベーターが遅い点」ではなく「待ち時間が手持ち無沙汰な点」にある
  • そこで、手持ち無沙汰にならないよう、エレベーターホールに鏡を取り付けてみた
  • すると、身だしなみを整えながらエレベーターを待つことができるようになり、苦情が激減した
  • これが、イケている問題解決だ!

ちょっと雑ですが、こんな内容です。

発祥はおそらく、超名著『ライト、ついてますか』なのですが、エレベーターの話は本当にいろんなビジネス書で登場します。

だから、『創造力を民主化する―たった1つのフレームワークと3つの思考法』でエレベーターの話を見かけたときは、こう思っちゃいました。

「うわ、またこの話かよ」

「どうせまた、ありきたりな問題解決の話が書かれているのかな」


でも、そう思う気持ちをグッと堪えて、しばらく読み進めてみると、本書に対する印象が180度変わりました。

「やべー、これ神本だわ」

ということで、今回は、本書の神本っぷりを全力でお届けいたします。

「アナロジーを効かせろ」「発想を転換しろ」の方法がようやくわかった。

本書では、創造力(想像力)を「いろいろなものを繋ぐ力」と定義しています。

そして、創造力を構成する3つの思考法として「統合思考」「アナロジー思考」「転換思考」を体系的に解説しています。

その中でも、特に心に刺さったのが「アナロジー思考」と「転換思考」です。

というのも、いろんな本に書いてあった「アナロジーを効かせろ」「発想を転換しろ」という捨て台詞・・・もとい有難いお言葉たちがあったわけですが、その具体的な方法論まで踏み込んで教えてくれたからです。

アナロジー思考は、こうやるのだ。

まずは、アナロジーの効かせ方について。

例えば、歯ブラシの進化バージョンを考えるとします。

最初は、歯ブラシの使用シーンをWho× Where×Whenの3要素に分解します。

Who:会社員が
Where:自宅で
When:歯を洗うとき

その後、この3要素のいずれかを抽象化します。
今回の例では、「歯を洗うとき」に焦点を当てます。

歯を洗うとき→身体を洗うとき→硬いものを洗うとき→何かを洗うとき

・・・こんな感じですね。

このとき、「ほどよい抽象度」を選ぶのが、めっちゃ難しいわけですが。

この本は、非常にわかりやすい目安を教えてくれます。

このように具体的に見てみると、適切な抽象度とは、以下のようなものとなります。

「あまりに抽象的で類推の対象が無数に広がりすぎてしまうレベルから一段下げた抽象度のもので、繋げる範囲を限定する具体的な要素が最低一つは入っているもの」

p185

つまり、「何かを洗うとき」だと、類推の対象が広がりすぎてしまう。
一方で、「硬いものを洗うとき」だと、ある程度、類推の範囲を限定することができる。

この微妙な匙加減を見事に言語化しているのは、本書くらいじゃないでしょうか。

個人的に、本書の中で一番感動したのが「ほどよい抽象度の基準」だったので、ご紹介させていただきました。

こういった金言がたくさん書いてあるんですよ。
本書を「神本」だと言ったのは、それが理由です。

・・・そんなことはさておき、話を戻しましょう。

ここまで、「歯を洗うとき」を「硬いものを洗うとき」に抽象化しましたね。

ここで「硬いものを洗うとき」に使っていそうな、別のものを思い浮かべます。「類推」ってやつです。

すると、車という硬い物体を洗う機械「洗車機」も類推の候補としてピックアップできます。

そして、洗車機の「いろんな角度から洗剤を吹き付けてブラシをかける技法」を歯ブラシに転用する。

そうやって生まれたのが、電動歯ブラシ「オーラルB」です。これです。

本書を読むまで、お恥ずかしながらオーラルBの存在を知りませんでしたが(笑)

商品説明を読んで、マジで欲しくなりました。

もうすぐボーナスが入るので、それで買います。

・・・また話が逸れてしまいましたが、以上が、本書で紹介されていたアナロジー思考です。

アナロジーを効かせる方法が、実用的に、しっかり「再現できるように説明」されている。これ、すごくないですか。

こんな本、初めて読みました。

これがアナロジー思考です。

一応、手元のメモ書きを↓に貼っておきます。

発想の転換は、こうやるのだ。

続いて、発想の転換について。

これも途中までは、さっきのアナロジー思考と一緒です。

Who× Where×Whenの3要素に分解します。

その後、今度はその3要素のうち、どれかを逆にひっくり返します。

例えば、Where「自宅で」を「会社で」に裏返します。

すると「会社員が、自宅で、歯を洗うとき」に使う歯ブラシを作れないか?と発想を転換することができます。

特に、従来の電動歯ブラシは重くて持ち運びがしづらいので、「軽くて会社に持ち運びできる電動歯ブラシ」はウケるかもしれない・・・そうやって生まれたのが、電動歯ブラシ「ドルツ」です。

私も福利厚生のカフェテリアポイントで、5年前くらいにドルツを手に入れましたけど、めっちゃ軽いです。

普通の歯ブラシくらい、とまでは行きませんが、バックに入れても全く気にならないくらい軽いです。

・・・そんな話はどうでもいいですね。

とにかく、Who×Where×Whenみたいに要素分解するまでは共通の作業で、あとは

  • ぱっと見は関係ないけど、よく見ると似ているものとくっつけるのがアナロジー思考
  • 真逆にひっくり返して、くっつけ直すのが転換思考

こう捉えると、「自分にもできそう!」と思えませんか?

そうなんです。「自分にもできそう!」と思わせてくれる力が半端ない・・・それが本書の魅力なんです。それくらい、再現性や実践性に長けた本なんです。

今ご紹介した例なんて、384ページある中の、本の3〜4ページくらいにすぎません。それくらい濃密な内容が、あと380ページも記されています。

まさに神本と言えるのではないでしょうか。

とはいえ、ベースはやっぱり論理思考。

ここまで「アナロジー思考」「転換思考」の方法について見てきました。

その過程で再認識したことがあります。

それは、ベースはやっぱり論理思考ってことです。

例えば、Who×Where×Whenに要素分解する技術は、論理思考の根幹の部分ですよね。

歯ブラシと聞いて「会社員が自宅で歯をきれいにする」と瞬時に言語化して、要素分解する。これは論理思考の技術に他なりません。

あるいは「歯をきれいにする→身体をきれいにする→硬いものをきれいにする…」と1つずつ抽象化するのも、論理思考の技術ですよね。

こういったベースとなる論理思考ができて、はじめてアナロジーやら転換思考やら使いこなせるようになるんだなーと、改めて実感しました。

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