書評 番外編

「〇〇大全」があまり好きではない理由。

(出典:https://unsplash.com/photos/FQvadXmA524


〇〇大全の価値とは?

書店にいくと、必ずといっていいほど目に入る「〇〇大全」。

〇〇大全の価値をシンプルに示すと、以下の通りである。

「情報量が担保されていることによる安心感」

「大量の情報が整理されているわかりやすさ」

この2つにつきる。

膨大な情報量が整理されて詰まっているから、何かあったときの辞書的な存在として、一家に一冊置いておきたい。

〇〇大全には、そんな安心感がある。

そういう考え方もあるだろう。

情報「量」は価値になり得るか?

実は、私自身は〇〇大全に見られるような「情報量」「情報の整理」にはあまり価値を感じていない。

だからこそ、「〇〇大全」と名のつく本は、ほぼビズペラでは紹介していない。

100歩譲って、「情報を整理してくれていること」には少し価値を感じるが、「情報量」に対してはほとんど価値を感じない。

理由は明白だ。

世に出回っている情報量が、もの凄いスピードで増えており、情報の希少性が急激に下がっているからである。

総務省の「ICTコトづくり検討会議報告書」によると、2020年に世の中に出回るデータ量は59ゼタバイトを超えるそうだ。(ゼタバイト…これでは、全くもってイメージが湧かない…)

2000年と比較すると、およそ6400倍。

まさに、指数関数的に情報が増えているわけだ。

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そのような中、大量の情報を整理しているだけにとどまっている「〇〇大全」の価値は如何ほどであろうか。

そう、筆者が調べて整理して大全化している情報は、我々も入手できる可能性が高いのだ。

例えば、仮に今後「睡眠の質をよくするぞ大全」なる本が現れたとしても、そこに載っているほとんどの情報は、ネットを検索すれば誰だって入手することができるだろう。

あるいは「睡眠の質をよくする方法〇選」みたいなWeb記事だって存在する。

もちろん、ただ情報を整理するだけでなく、筆者なりの洞察が加わっている本があることも重々承知しているが…そんな本は、ごく僅かである。

 

だからこそ、「〇〇大全」と名のつく本は、これまで避けてきた。

「コツ」まで踏み込んでいる本にこそ、価値がある

では、いったいどんな本に価値を感じるのか。

それは、情報の量ではなく「質」にこだわっている本だ。

ビジネス書でいうと、「コツ」まで踏み込んでいる本に、価値を感じる。

 

では、「コツ」とは何か?

それは、「ここさえ押さえておけば、誰だって70点は取れるであろう、本質的かつ具体的なポイント」である。

この「コツ」という概念について、私が知る限り最もわかりやすく説明している本が『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果をあげる法』だ。

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この本では、跳び箱を例に、「コツ」についてわかりやすく説明している。

まずは、ダメな例を見ていこう。

ふつうの先生だと、たとえば「助走スピードが足りないから飛べないんだ。もっと遠く勢いをつけて走ってこい」とか「踏み切る位置はここだ、ここ!」などと、必要なポイントを一つひとつ挙げて教えるだろう。そして、その子ができないポイントを飛ぶごとに指摘しながら、ともかく何度か繰り返しやらせて飛べるようになるのを待つのが常だ。

p22

筆者によると、上記は「コツ」とは言わないらしい。

では、どんな概念が「コツ」と言えるのだろうか。次の記述を見ていただきたい。

やはり、跳び箱をうまく飛べるようになるのにも、それなりのコツがあった。

答えは、まず両腕で体重を支える感覚を覚えさせる、これに尽きるというのだ。

だから、何度も何度も実際に跳び箱を飛ばせる必要はない。一回やらせてみて飛べなかった子には、たとえば床の上で体重を支える感覚を教える。具体的には、床に座らせ、両脚のあいだに両手をつかせて、両腕で身体をちょっと浮かせてみろ、といえばいい。

p23

これがコツである。

図にまとめると、以下のように表すことができる。

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  • とにかく、知っている情報を全て五月雨式に伝えるのか
  • それとも、本質的なコツを特定して、それだけを伝えるのか

この2つには、越えられない大きな壁がある。

〇〇大全は、情報さえ整理できれば、それ以上の思考はほとんど必要ない。大全である以上、量を担保しなければならないのだから、「コツに絞り込む」なんて思考プロセスを踏む必要はないし、「これがコツだ!」と言い切るリスクを取る必要もない。だから、つまらない。

一方で、「コツ」を絞り込んだ本を書くためには、高い思考力と、「これがコツだ!」と言い切るだけの勇気が必要だ。ある程度捨象したうえで言い切っているため、賛否両論が分かれることが多い。だからこそ、おもしろい。

以上が、私が「〇〇大全」と名のつく本にあまり価値を感じていない理由である。

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