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【要約・書評】「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術

「自分の頭で考えなさい」

こう言われて悩んでいる人に、心からオススメしたい本が2冊あります。


1冊目は『知的複眼思考法』。

20年以上前の本ですが、「あらゆる立場から問いを投げかける技術」を骨の髄まで叩き込んでくれました。

脳みその血管がはち切れるくらい考えさせられる経験を1000円以下で楽しめますので、超オススメです。

しかし、問いをいくら立てたとしても、問いに対してユニークな答えを作らねばなりません。

どうやって、自分ならではの解釈を練りこんだ、切れ味抜群の答えを作り出せるのか?

・・・このリクエストに応えてくれるのが、2冊目。今回ご紹介する『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』です。

この本読むと、しびれますよ。

「え、桃太郎を読むだけで、そんなに尖った解釈ができるの?」と、筆者の解釈力に唸らされます。

それだけでなく、筆者の解釈力を私たち読者でも「再現」できるよう、ものすごく丁寧に丁寧にガイドしてくれるんです。

筆者が言っていることを、とりあえず「暗記」して試しまくれば、気づけば思考力がインストールされている。

そんな不思議な力を持った本が、本書『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』です。


・・・前置きが長くなりましたね。

本の中身と、そこから学べたことを書き綴っていきます。

「対比」のない「示唆」はただのゴミ

本書から得た学びで、とりわけ印象的だったのがこれ。

「対比」のない「示唆」はただのゴミ。


・・・ところで、示唆とは何か?

例えば、「空が曇っている」というファクトを見たときに、「雨が降りそうだ」と解釈したとしましょう。

これも立派な示唆です。

あるいは、「空が曇っているのにも関わらず、午後の天気予報は快晴だ。おれは晴れ男に違いない」・・・これも示唆です。


このように、事実に対して解釈を加えることを示唆と呼ぶわけですが。

示唆にも、良い示唆とそうでない示唆がある。

そして、良い示唆を出す方法を教えてくれるのが、本書『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』です。


良い示唆を出すための考え方、それは次のようなものです。

ファクトとファクトの対比。ファクトと常識の対比。ここから、良い示唆が生まれる。

逆に言うと、対比なき示唆は、ただのゴミ。


図に示すと、次のような感じです。

どういうことか?

本書は、桃太郎を例にとって説明しています。

例えば、確認できたファクトが「桃太郎は、猿・雉・犬を仲間にした」だとしましょう。

このファクトと何を対比させるか?ここは、知恵の絞りどころです。

ちなみに本書では「鬼を倒すのだから、犬よりライオン、雉より鷲、猿よりゴリラを仲間に加えたほうが、勝率が高い」という常識を対比させています。


「鬼を倒すのだから、犬よりライオン、雉より鷲、猿よりゴリラを仲間に加えたほうが、勝率が高い」

にもかかわらず

「桃太郎は、猿・雉・犬を仲間にした」

・・・この対比から生まれる示唆は何か?

「チームを作るうえでは、リーダーよりも弱くて使いやすい人を選んだほうがいいのでは」という示唆が生まれます。


パッと読んだ感じ、「え?」と思う示唆です。

しかし「もしかすると、そうかも」と思える示唆でもあります。

このような「パッと見たら謎だけど、もしかすると正しそう」だと思える解釈。これこそが、良い示唆なんだと本書から教わりました。

学び:「正しそう」なことよりも「意味がありそう」なことを考える

本書を読んでみて改めて思ったのは、世の中には4種類の意見があるなーと。

①意味なし×正しくなさそう=「意味なし・不要」な意見
②意味なし×正しそう=「当たり前すぎてつまらん」意見
③意味あり×正しくなさそう=「すごそうだけど、大ハズレ」な意見
④意味あり×正しそう=「マジですごい」意見

例えば、「人間は酸素を吸って、二酸化炭素を出している」…これは確かに正しい。でも、特に何か聞き手にとって意味があるかというと、そんなことはない。

当たり前すぎて、つまらないから。


ただ、会議中とかに意見を求められると、保身のあまり、「皆が同意しそうなこと=既知の事実」を発言して逃げてしまう。

・・・なんてのはつまらないぞ!間違ってもいいから、答えのないゲームを楽しもうぜ!と背中押ししてくれるのが、まさに本書『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』だなと。


ステップとしては、こんな感じでしょうか↓

まずは「正しそうなことを言うモード」から「意味がありそうなことを言うモード」に切り替わる勇気を持つこと。

最初から「意味あり×正しそう」な示唆なんて出せるわけがないんだから、最初は「意味あり×正しくなさそう」な示唆を連発してみる。

どうせ会議中に誰がどんな発言をしたかなんて、10秒もすればみんな忘れるんだから、とりあえず「正しそう」よりも「意味ありそう」なことをバンバン発言する。

そうすると、少しずつ示唆出しの達人になってきて、「意味あり×正しそう」なことをスラスラ言えるようになるかもしれません。


・・・こんな風に「ああ、自分も、セクシーな示唆出しができるようになりたいな。うん、示唆出そう」と自然と思わせてくれる。

それが、本書の一番の魅力だと、しみじみ感じました。

おすすめです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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