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【要約・書評】『「仕事ができる」とはどういうことか?』楠木 建、山口 周

この本で解ける疑問は?

  • 「仕事ができる」とはどういうことか?
  • 「仕事ができる人」と「仕事ができない人」の違いは?


https://www.amazon.co.jp/dp/480029469X

『「仕事ができる」とはどういうことか?』って?

ついに…ついに…待ちに待った書籍が家に届きました。

なんと、私が大好きな著者、楠木 建氏と山口 周氏の共著が出版されたのです。

このお二方に共通しているのは、「論理的思考」だけでは絶対に出てこないような示唆を次々と展開されている点です。

おそらくこのお二方は、論理/サイエンスだけでなく、強固な「直観/アート」を持ち合わせているのでしょう。

でないと、ここまで「筋が通っていて、かつ独自のモノの見方」はできないはずです。

「そんなお二人の洞察力に触れたい!」

それだけが理由で、本書を手に取ってみました。

 

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • 仕事ができるとは、「成果が出せる」ということ。広い意味での顧客から「頼りになる」「この人が来たから、もう大丈夫だ」と思われることを意味している。
  • 「この人が来たから、もう大丈夫だ」という独特の感覚は、単に「英語」「プログラミング」などのスキルだけ持っていても生まれてこない。この独特の感覚を生んでいる正体は「センス」である。
  • センスは、「誰もが見て見ぬフリをしてきた矛盾を直視する力」「具体と抽象の往復運動をする力」と訳せる。これらは、気付いたら「事後的」に身についているものであって、狙って獲得できるものではない。「何となくやってみた」を繰り返していくことで、徐々に輪郭がハッキリしてくるものである。
  • なぜセンスが必要なのか?それは、「スキルの先にある価値=役に立つ」が飽和しつつあるからである。スキルが提供する「解決策」は、コモディティ化しているため、デフレ下にある。
  • では、なぜセンスが重要なのにもかかわらず、ビジネスの文脈ではセンスよりもスキルが重視されてしまうのか?第一の理由は、センスには再現性がなく、説明能力に欠けるからである。第二の理由は、日本人が好む「因果応報の世界観」からは、センスがかけ離れた概念だからである。
  • ここまで述べてきたような「センスがある人=仕事ができる人」と「センスがない人=仕事ができない人」の間には、いくつか違いがある。
  • 仕事ができる人は、自分の「意志」で内発的に動くことができる。「部分」ではなく「全体」で考えることができる…などの特徴を持つ。
  • 一方、仕事ができない人は、すぐに「分析」や「作業」などの「努力が目視できること」に手を付けてしまう。また、順列の感覚を持たずに、並列的にToDoリストを作ってしまう…などの特徴を持つ。

いかがでしたでしょうか。

仕事ができる/できないを大きく分ける「センス」の正体について、深く切り込んだ本ですね。

「センス」には再現性も方法論も存在せず、千差万別ですから、本の章立てや論の展開にも、これといって枠組みや体系があるわけでもありません。

ですので、読み手によって得られるものや解釈が大きく変わってきます。

ということはですね…正直上に述べた要約は「僕にとっては役に立つもの」ですが、「皆さまにとっては役に立たないもの」かもしれません。

まあ裏を返すと、それだけ解釈の余地がある、内容が深い良書だともいえます。

今月読んだ本の中で、一番感動しました。

是非、僕が書いた要約などあてにせずに、買って読んでほしい!
…そう、強くオススメしたい本です。

学び

「コツを見抜く力」もセンスの一つ

僕がこの本を読んでいて、真っ先に頭に浮かんだ本があります。

それは『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果をあげる法』という名の書籍です。

この『もっと早く、もっと楽しく、仕事の成果をあげる法』で述べられている方法も、グッと抽象度を挙げると「センスを磨け」と書いてあります。

例として、この本で一番好きな文を取り上げてみます。

まずはこれです。この記事でも述べてきた「仕事ができない人=センスがない人」の事例だと言えます。

ふつうの先生だと、たとえば「助走スピードが足りないから飛べないんだ。もっと遠く勢いをつけて走ってこい」とか「踏み切る位置はここだ、ここ!」などと、必要なポイントを一つひとつ挙げて教えるだろう。そして、その子ができないポイントを飛ぶごとに指摘しながら、ともかく何度か繰り返しやらせて飛べるようになるのを待つのが常だ。 (22ページ)

次にこれです。「仕事ができる人=センスがある人」の事例です。

やはり、跳び箱をうまく飛べるようになるのにも、それなりのコツがあった。

答えは、まず両腕で体重を支える感覚を覚えさせる、これに尽きるというのだ。

だから、何度も何度も実際に跳び箱を飛ばせる必要はない。一回やらせてみて飛べなかった子には、たとえば床の上で体重を支える感覚を教える。具体的には、床に座らせ、両脚のあいだに両手をつかせて、両腕で身体をちょっと浮かせてみろ、といえばいい。(23ページ)

この両者の違い、なんとなく「センスのあるなし」が垣間見えたかと思います。

後者を読むと、その裏側には「具体と抽象の往復運動」があったはずです。

いくつもの「跳び箱を飛ぶことができた具体的な要素」から、「要はこれでしょ」とエッセンスとなるコツを見抜く。

これこそが「センス」ではないでしょうか。

 

このことに気付けた瞬間、また一歩「センス」の正体に近づけた気がしました。

同時に、「センスがある状態」と「現状の自分」が遠いことにも気づくことができました。

こういった「感動と悔しさの共存」があったので、今月最も心を動かされた一冊といって差支えないでしょう。

繰り返しになりますが、この本、立ち読みでもよいので、是非一度読んでみてください。

明日から取れるアクション1つ

  • 直観的に「この人、センスいいな」と思う人を見つけて、とにかく観察してみる


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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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