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【要約・書評】『イノベーションの攻略書』テンダイ ヴィキ

この本で解ける疑問は?

  • 既存事業を回しながら、新規事業を生み出すために必要な仕組みとは?
  • そもそも、イノベーションを生み出す仕組みは構築できるものなの?


https://www.amazon.co.jp/dp/4798158615

『イノベーションの攻略書』って?

「イノベーションは大事だ」

この意見に反対の方は、まずいらっしゃらないと思います。

100人いたら100人が「大事だ」と口を揃えるほど、「イノベーション」は非常に重要なキーワードのようです。

では、イノベーションはどうやって生み出せばよいのでしょうか?

  • デザイン思考が必要だ
  • ビジネス・テクノロジー・クリエイティブの3要素を駆使する必要がある

…こんな意見をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、一人ひとりがイノベーションを生み出すためには、これらの思考や資質が必要です。

しかし一方で、こういった思考や資質に頼ってしまうと、結局は「個の力頼み」になってしまいます。

これからは「イノベーション」に「再現性」を持たせる必要があります。

そのための「仕組み」を解いた本が、本書『イノベーションの攻略書』です。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • 既存事業を持つ企業が、現状のビジネスモデルに囚われずに、イノベーションを起こすためには、4つの要素が必要。それは「イノベーション投資方針」「イノベーション・ポートフォリオ」「イノベーション・フレームワーク」「イノベーションKPI」である。
  • イノベーション投資方針は、外部環境や自社の強みに関する質問を通して明らかにしていく。また、「注力する分野」以外に「投資しない分野」も忘れずに明らかにしておくことで、選択と集中の精度を上げることができる。
  • イノベーション・ポートフォリオは、(市場)×(製品)の2軸で組むと良い。領域は、1)既存顧客向けの既存商品の継続的な改善をしていく「中核領域」、2)現在うまくいっている製品を新市場に適用するか、既存市場向けに新製品や新サービスを提供する「隣接領域」、3)新市場向けの新事業を創出することに注力する「変革領域」の3点に分けて考える。魔法の方程式として、「中核:隣接:変革=7:2:1」の比率でポートフォリオを組むことが提唱されている。
  • イノベーション・フレームワークを使うことで、どんな事業でもイノベーション工程のどこに位置しているかを一目で把握できる。具体的には、自社の事業を1)アイデア創造、2)アイデア検証、3)事業の拡大、4)事業の見直しの4ステップで捉える。
  • イノベーションKPIは、自社事象の進捗や成否は測定するためのモノサシである。本質的には、次の3つの活動を管理することが目的である。
    第一に、経営陣は、イノベーション工程の様々な地点の、様々な事業に対する投資判断を行い、かつ適切な投資金額を特定する。
    第二に、イノベーション・チームは、個別のイノベーション・プロジェクトの進捗を管理・測定し、経営陣が継続して投資すべき事業を選定するための判断材料を提供する。
    第三に、取締役会は、全社事業に対するイノベーション目標や、事業ポートフォリオの目標達成状況を確認する。

いかがでしたでしょうか。

経営者視点の、非常に視座の高い著書ですよね。

「自社の事業を、イノベーションの観点で、どうポートフォリオを組んで管理するか?」が体系的によくわかる本です。

約400ページのボリュームですが、議論に使用できるワークシートも豊富についているので、手を動かしながらサクサク読める設計になっている点も注目すべきポイントだと思います。

学び

仕事ポートフォリオも「70:20:10」で組めているか?

本書を読みながら、鳥肌が立った瞬間があります。

それは「70:20:10」の比率を目にしたときです。

この比率、どこかで目にしたことはありませんか?

 

実は、Googleも、この「70:20:10」をプロジェクト管理ルールとして定めているのです。

  • 70%は、コアビジネスに時間を費やす
  • 20%は、成功の兆しが見えはじめた成長プロジェクトに時間を費やす
  • 10%は、失敗のリスクは高いが、成功すれば大きなリターンが見込める全く新しいことに時間を費やす

こうした仕事のポートフォリオを持つ意識が、Googleの社員1人ひとりに浸透しているそうです。ここに、Googleの強さの秘訣が垣間見えますね。

もちろん、Googleはエンジニア組織ですので、そうでない組織に適用する際は、比率の考え方などを若干修正する必要はあるでしょう。

しかし、「日々の仕事の一定割合は、全く新しい取り組みに割いてみる」…こんなアクションであれば、どんな組織でも取り入れることができると思います。

間違っても「日々の仕事は100%、コアビジネスや定常業務にしか充てていません」みたいな状態が蔓延してしまう…そんな状況だけは避けたいものです。

恒例の、次回の意を込めて。

明日から取れるアクション1つ

  • 自分の仕事を「70:20:10」のポートフォリオに仕分けしてみる


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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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