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【要約・書評】『ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』

仕事ができる諸先輩方はみんな口を揃えて、こう言います。

「ドラッガーは絶対読んだほうがいいよ」

10回くらい言われました。

そのたびに、ドラッガーの本に挑戦しました。

プロフェッショナルの条件

マネジメント

非営利組織の経営

これらの本は、3周ずつは読んだかもしれません。

・・・でも、正直内容がサッパリでした。


「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である」

・・・な、なに言ってるんだってばよ?

機関ってどういうこと?

「1つひとつの組織は、社会というシステムの一部を担っている」ってことかしら。

と、こんな感じで、1行1行が意味深な表現で書かれているので、読むのに疲れる疲れる。

しかも、読み終わったところで、自分の解釈が合っているのかもわかりません。

そうやって、国語力がなさすぎるがゆえに、何度もドラッガー先生に打ちのめされては、諦めて・・・を繰り返していました。


しかし今回、ついに希望の光が見えました。

ドラッガーが語る「マネジメント」を、超絶わかりやすく解説してくれる本が登場したのです。

ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』です。

『ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』とは?

本書は、経営コンサルタントの國貞 克則氏が書かれた本です。

著者の本で初めて出会ったのが、『財務3表一体理解法』でした。

というのも、私がコンサルになりたてのときに、会計の知識をキャッチアップする必要があったんですね。

そのときに、Amazonで「財務諸表 わかりやすく」で検索して、一番最初に表示されたのが『財務3表一体理解法』でした。

これがまあ、びっくりするくらいわかりやすい本でして。

貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書という3つの概念がパズルのように繋がっていく感覚は、いまでも忘れません。

そんな著者が満を持して書いた新刊が『ドラッカーが教えてくれる「マネジメントの本質」』です。


本書を知ったとき、最初はこう思いました。

「あれ、会計の専門のかたが、マネジメントについて書けるの?」と。

でもよくよく考えると、あれだけ財務諸表をわかりやすく解説した著者なわけです。

であれば、会計と同じく難解な、あのドラッガーも、わかりやすく料理してくれるんじゃないか。

そんな期待を持ちながら、本書を手に取ってみました。


読んでみた感想は・・・

やっぱり、筆者は、物事をわかりやすく解説するプロだった。

あのドラッガーを、こうもわかりやすく解説できるのか・・・と感動しました。

どれくらい感動したのか、詳しくお伝えします。

マネジメントとは、人間と成果に関わること

本書の表紙には、こう書かれています。

「あなたは、「マネジメントとは何か」という問いに答えられますか?」


そのときの私の回答は「Yes。マネジメントとは、品質とコストと納期をコントロールすることだ」というもの。

まさに日本語訳のとおり、マネジメントを「管理」という意味で捉えていました。

しかし、「管理」だけでは、人は絶対に動きません。

管理されると、人は途端にやる気をなくし、思うように仕事をしなくなる。

そう頭の奥底ではわかっていながらも、「マネジメント=管理」以外の定義が見当たらない。

そうやって、「マネジメントとは何か?」に頭を悩ませている人も、少なくないのではないでしょうか。


しかし、本書はマネジメントの明確な定義を授けてくれます。

マネジメントとは「人間と成果に関わること」だと、シンプルに表現してくれているのです。

人間としての幸せを実現させつつ、成果も出させる。

それがマネジメントだと、本書は教えてくれました。

マネジメントに求められる5つの役割

とはいえ「人間と成果に関わりなさい」と言われても、イマイチ何をすればよいか、よくわかりません。

しかし、安心してください。

著者は、複数のドラッガーの本から「マネジメントの役割」を5つに整理してくれています。

  1. 目的・目標・価値観の共有
  2. 個々の責任やコミュニケーションを基盤とした組織の一体化
  3. 強みを活かす
  4. 成長(教育・自己啓発・学習)
  5. 成果の評価

この5つを眺めていくなかで、改めて気づきを得られたので、以下の図表にまとめておきます。

目的・目標・価値観の共有

マネジメントの役割1つ目が「目的・目標・価値観の共有」です。

当たり前っちゃ当たり前な気がしますが、改めて考えてみたいのが、なぜ目的や価値観を共有しなくてはならないのか?


まず、組織の目的(理念やビジョン)を共有する理由は、社員のリソースを分散させないためでしょう。

目的や目標をきちんと共有していないと、社員はあっちこっち、自分がやりたいことに走ってしまうかもしれません。

あまりに好き放題うごかれると、社員1人ひとりのベクトルがばらけてしまい、組織全体で目指したい方向性が達成されません。

だから、目的や目標を共有することで、「これに向かいなさい」「これはやっちゃダメ」といったことを明確にする。

この方向づけが、組織で成果を出すために必要不可欠な役割なのでしょう。


次に、組織の価値観をなぜ共有するのか?

それは、コミュニケーションコストを最小化するためだと考えます。

価値観の衝突ほど、非生産的なものはありません。

なぜならば、価値観には白黒つけることができず、いつまで議論しても平行線で決着がつかないからです。

決着がつかない議論に費やす時間があるほど、私たちは暇ではありません。

だから、組織に共通する価値観を定めます。

「いろいろ価値観はあるだろうけど、でもこの組織ではAという価値観が正義だから」

「Aという価値観を悪だと思う人は、組織に入ってこないでくれ」

と主張するために、価値観を明文化するわけです。

そうすることで、価値観に共鳴した人材だけが集まり、価値観の衝突という非生産的な議論を避けることができます。


以上、ドラッガーの真意は知りませんが、私なりに「目的・目標・価値観を共有する意味」を考察してみました。

個々の責任やコミュニケーションを基盤とした組織の一体化

「個々の責任やコミュニケーションを基盤とした組織の一体化」

これを私なりに言い換えると、「誰が何に対して責任を持っているかを、誰でもわかるよう見える化しましょう」と表現できます。

組織内のコミュニケーションが整然としている組織と、混沌としている組織。

その大きな違いの1つは、「社内の業務と役割分担が整理されているかどうか」です。

業務が整理されて、役割分担が明文化されている組織は、コミュニケーションもスムーズです。

なぜならば、役割分担が決まっていると、何かを進めたいときに「誰にどんなコミュニケーションを取ればいいか」が一目でわかるからです。

「この仕事についてはAさんが責任者だから、Aさんに判断を仰ごう」・・・みたいに考えやすいわけです。

これも、マネジメントに必要とされる役割だと、腹落ちしました。

強みを活かす

「強みを活かす」これは、マネジメントにおいてマストな考え方でしょうね。

森岡氏の『誰もが人を動かせる!』でも語られていましたが、

  • 弱みを伸ばして成功した人を見たことがない。ナスはナスにしかなれない。ナスがキュウリになることは、絶対にない。
  • 強みでしか他人を幸せにすることはできない。

これはもう、個人として・組織として成果を出すための、原理原則といえるでしょう。

ドラッガーもこの点は昔から指摘していました。

現代のマネジメントやリーダーシップ本の根底には、ドラッガーの考え方が根付いているなと、改めて感じました。

成長(教育・自己啓発・学習)

マネジメントの4つ目の役割は、人を成長させること。

これも普遍的な役割でしょうね。


ただ、人を成長させるのは本当に難しい…

「なんで、こんなこともできないんだ」と腹の底で思いながらも、相手が成長するまで辛抱強く我慢しながら、育てなければならない。

「自分でやったほうが早い」という誘惑に勝たねばならない。

マネジメントとは、本当にしんどいものだと、改めて思い知らされます。


そういえば最近、人を育てるうえで、非常に参考になった本がありました。

若手育成の教科書』という本です。

本書のエッセンスを掻い摘むと、人を育てるには「言わせて、やらせて、決めさせるのが一番」ということです。

相手の口から「こうしたほうがいいと思います」という声が出るまで、辛抱強く待つ。

こちらからは、答えを言わない。

そうしたことの大切さを痛感させられる一冊です。

成果の評価

この点については、本書ではあまり語られていませんでした。

というのも、成果を評価する方法は、企業によって大きく異なるためです。

とはいえ、「成果の評価」自体は、マネジメントにおいて必要不可欠な役割だとは書かれていましたので、あとは自分で全部考えろ、ということなんでしょう。


以上の5つの要素が、マネジメントに必要とされる役割だと学ぶことができました。

それが、本書を読んで一番の収穫だったかもしれません。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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