テクノロジー デザイン ナレッジセット 書評

【要約・書評】『イノベーション・スキルセット』 田川 欣哉

この本で解ける疑問は?

  • デザイン思考やテクノロジーはなぜ大事なのか?
  • BTC(ビジネス×テクノロジー×デザイン)とは何か?
  • どうすれば、デザインのスキルを上げることができるのか?


https://www.amazon.co.jp/dp/4479797033

『イノベーション・スキルセット』って?

以前から気になっていて、ずっと避けていたテーマがあります。

それは「デザイン」。

理由は、「デザイン」というキーワードが、私にとって果てしなく遠い存在だと思っていたからです。

というのも、次のように、「デザイン」に対する先入観を持っていたからなんです。

  • デザインは「右脳」的な感覚が求められる
  • ロジカルシンキングのような「左脳」的な考え方とは対極にあるもの
  • 「左脳」が強い人は、「右脳」を鍛えるのに苦戦しそう

要は「デザインvsロジカル」みたいに「vs」で捉えていたからなんです。

…しかし、本書『イノベーション・スキルセット』を読んで、この考え方が勘違いだと気づかされました。

「デザインvsロジカル」ではなく「デザインwithロジカル」だと。

「vsではなくwith」

こんな素敵な考え方を示してくれた本書を、今回はご紹介します。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • BTC人材が求められる背景には、第1次~第4次産業革命の流れが関係している。第1次産業革命では、機械化によりモノの大量生産が始まったと同時に、粗悪品も多く生まれた。これにより、見た目が良いモノへのニーズが生まれ、「デザイン」が注目されるようになった。
    第2次産業革命では、電子や電気の文脈が加わり、エレクトロニクスを活用した制御技術が発達してきた。さらに第3次産業革命では、ソフトウェアも加わり、コンピュータが人間にとって身近な存在となった。この動きに伴い、「コンピュータと人間の接点のデザイン」が避けては通れなくなり、「デザイン」がNice to haveからMust haveへと変わった。
    第4次産業革命では、AIなどの最新技術も加わり、モノをコトに含んだ上で、顧客の体験価値をデザインするスキルが求められるようになった。
    以上の背景を見てもわかる通り、「デザイン」と「テクノロジー」は切っても切り離せない存在となった。
  • では、BTC人材とは何か?それは「ビジネス」「デザイン」「テクノロジー」の三要素を組み合わせて、ブランド構築やイノベーションに貢献できる人材のことをいう。従来の日本は、「ビジネスとテクノロジーを繋ぐ力」は強いモノの、「ビジネスとデザイン」や「テクノロジーとデザイン」を繋ぐ力が弱い。
  • 「ビジネスとデザイン」や「テクノロジーとデザイン」を繋ぐ力が弱いということは、ビジネスとテクノロジー双方の接点となっている「デザイン」を重点的に強化する必要があるといえる。「デザイン」の感度を上げるためには、大きく3つの方法がある。
    第一に、「n=1」の徹底的な観察である。現地現物を直接見聞きし、ファクトや背景のコンテキストを掘り起こす練習をする必要がある。具体的には、1日何時間か、身の回りのもの何か1つを徹底的に観察して問題点を見つける練習をするとよい。
    第二に、プロトタイピングである。具体的なプロトタイプを見せた後に、結論→詳細→結論…と議論を進めていき、プロトタイプを改善し続ける習慣を持つと、「具体的なモノをすぐに設計する力」が身につく。
    第三に、「ふせん」トレーニングである。ある雑誌などを題材に、自分が好きだと思ったものには「青」を、ダメだと思うものには「赤」、よく分からないものには「黄」のふせんを貼っていく。この「黄」が多いほど、センスが悪いといえる。「ふせん」トレーニングを継続していくと、徐々に自分のセンスが磨かれ、「黄」の判断が少なくなっていく。

いかがでしたでしょうか。

「BTC人材って本当にすごいの?」と思われた方、試しに下記のページを見てみてください。

ja.takram.com

「Takram」は筆者の田川 欣哉氏が経営されている会社です。

ビジネスだけでもテクノロジーだけでも生まれないサービスをいくつも生み出しているのがわかります。

日本酒や羽田のラウンジ、地理情報のデータビジュアライゼーションなど、あらゆる分野で活躍されている点も特徴です。

業界や分野を越境する「BTC人材」の真相に迫ることができる一冊です。

学び

最近のホットテーマ「n=1」?

本書で出てきたキーワード「n=1」。

「1人の顧客や、1つの対象物を徹底的に分析する」という考え方なわけですが、どこかで見たことがありますね。

そう、『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』で出てきた「N1分析」です。

 

この本を見てもわかる通り、もはや「マス=大衆」に目を向ける時代は、終わりを迎えているのかもしれません。

ある特徴的な「1人」を目が乾くくらい観察して、ありったけの気付きを書き出していく。

これらの気付きを、ビジネスでどう解決するか、ビジネスを実現するためにテクノロジーをどう活用できるかを考える。

このような「総合格闘技」的なモノの見方が求められているのでしょう。

自分の専門性以外の領域に、思い切って「越境」する勇気が必要なのかもしれませんね。

私も「デザイン」の世界に踏み込んでみようかと思います。

明日から取れるアクション1つ

  • 1つ対象物を決めてみて、「ふせん」トレーニングをやってみる
    (「n=1」×「ふせん」)


https://www.amazon.co.jp/dp/4479797033

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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