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【要約・書評】『自主経営組織のはじめ方』アストリッド フェルメール

この本で解ける疑問は?

  • 最近流行りのティール組織とは一体何者?
  • ティール組織は確かに理想形だけど、どうやって実現させればいいの?

『自主経営組織のはじめ方』って?

「ティール組織」

最近よく耳にするキーワードですね。

このキーワードの意味、ちゃんと説明できますか?

私なりの定義は「ティール組織=上司の監視がなく、個人やチームが自主的な意思決定を繰り返しながら進化していく組織」。

このティール組織ですが、次の3つの要素で構成されています。

①自主経営(セルフ・マネジメント)
階層や合意に頼ることなく、同僚との関係性のなかで働く組織構造や仕組みがある

②全体性(ホールネス)
誰もが本来の自分で職場に来ることができ、同僚・組織・社会との一体感を持てるような風土や慣行がある

③存在目的(エボリューショナリー・パーパス)
組織全体が何のために存在し、将来どの方向に向かうのかを、つねに追求しつづける姿勢を持つ
(『自主経営組織のはじめ方』54ページより)

この中でも「自主経営」に重きを置いて解説した本が、本書『自主経営組織のはじめ方』です。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • 自主経営組織とは、一人ひとりあるいはチーム単位の意思決定を中心に据えた組織のことである。
  • 自主経営組織に移行するメリットは次の5点。
    • 従業員満足度の向上
      自分の仕事に対する権限を持っていると活躍しやすくなる。厳しい条件下でも解決策を見つける創造力を発揮する
    • 顧客満足度の向上
      顧客は、自分の意見がよりはっきりと相手に伝わり、自分の要望が考慮されていると感じるようになる
    • 間接費の削減
      監視や管理の仕事がほとんど必要なくなる
    • コミュニケーションの簡素化
      組織の全体像やレポートラインがシンプルに可視化されるため、コミュニケーションコストが低減する
    • ルールや規則の削減
      監視や管理の不要化に伴い、ルールや規則も不要になる
  • 自主経営に移行するために押さえておくべきポイントは次の5点。
    • マネジャー
      ⇒実際の業務プロセスには干渉しない
      ⇒フレームワーク(チームの意思決定/構造/
       活動の中心になるような方針)を策定する
    • 間接部門
      ⇒方針策定/現場業務の品質管理は行わない
      ⇒現場業務に役立つ情報やツールを提供する
    • コーチ
      ⇒現場チームへの助言/問題点の指摘/仲裁を行う
    • チーム
      ⇒フレームワークに沿って意思決定を行う
      ⇒意思決定事項や仕事の分担は、チームで合意
       したうえで進める
    • コミュニケーション
      ⇒問題の詳細な説明を考えるのではなく、
       解決策に至ることを目指す=解決志向

いかがでしたでしょうか。

個人的なこの本のお気に入りポイントを挙げると、次の2点です。

  • かなり具体的なチェックリストやモデルが盛り込まれている。
    例)チームコーチの評価表、解決志向型ミーティングモデル
  • 重要な章の末尾には、翻訳者=日本におけるティール組織の第一人者の解説がついている。しかも凄くわかりやすい。

この2点が、本書の価値を何倍にも高めているように思えます。

「ティール組織って何ぞや?」と思われた方、是非手に取ってみてはいかがでしょう!

学び

ティール組織は万能か?

色々とティール組織に関する本や記事を読んでいると、「ティール組織が絶対働きやすいだろうし、いいじゃん!」と思えてきました。

しかし、そういったときこそ、あえて「本当か?」と疑ってみる必要があります。

例えば、次の図のような切り口だと、どうでしょう?

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  • 縦軸:思考型(付加価値)↔オペレーション型(非付加価値)
  • 横軸:個人プレー↔協働(コラボ)

何を付加価値、非付加価値とするかは別途議論する必要がありますが…
例えば、「ミスが一切許されないデータ入力業務」を思い浮かべてみましょう。

この業務は、あまり思考は必要とされません。「思考する暇があったら、手を動かして多くのデータをミスなく入力しろ!」と言われそうな業務です。

また、基本的には、ミスが無いかのダブルチェックを除いたら、ほとんど個人プレーの業務ですよね。

こうした業務に、「自主的な意思決定を!」なんてコンセプトを提示しても、あまり意味は無いと思います。

下手に創意工夫されるよりも、決まった手順を正確に速く回してもらった方がいいわけです。

…と、どうやら「ティール組織」は万能ではないようです。

 

流行りものを見て、「いいね、やってみよう!」とスピーディーに実行するのも大切ですが、一度立ち止まって「本当か?」と思考実験する習慣も大切ですね。

自戒の意も込めて、そう思います。

 

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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