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【要約・書評】『<問い>の読書術』大澤 真幸

この本で解ける疑問は?

  • 読書に最近慣れてきた。読書のレベルをもう一段上げるには?
  • 「考える力」を養うための読書術は?
  • 読書中に「問い」を立てるには?

『<問い>の読書術』って?

連日お届けしている「読書術」。

今回は『<問い>の読書術』です。

本書を取り扱う背景は次の3点です。

第一に、『理科系の読書術』で述べたような「読書を苦行だと感じる人」がある程度読書に慣れてきて、「次のステップに進もう」と思った時に読める本だから。

第二に、『できる人の読書術』でも述べられていたように、二流と超一流を分けるのは、読書を通じて「考える力」を養えるかどうかがカギだから。

第三に、『武器になる哲学』でも述べられていたように、先ほどの「考える力」を養うには、「問いを立てる力」が大事だから。

以上の理由から、本書をご紹介します。

-Why-なぜ書かれたのか?

本書の「まえがき」には次のように述べられている。

本書は、私に、<問い>を開いてくれたいくつかの書物についての、長めのレヴューを集めたものである。

(中略)

本書の書評を読んで、読者がその本を読みたくなってくれれば、あるいは、関連する書物を紐解きたいという欲求を読書のうちに喚起することができれば、私の書評は成功したことになるだろう。(6ページ)

つまり、「大澤氏が書いた書評を通して、自分にとって大事な<問い>を見つけて、読書の欲求を掻き立てること」が本書の目的といえます。

-What-なにをすべきか?

本書におけるキーワードは<問い>です。
この<問い>について、筆者は次のように述べています。

本を深く読むということは、どういうことか。読むことを通じて、あるいは読むことにおいて、世界への<問い>が開かれ、思考が触発される、ということである。本は、情報を得るためだけに読むわけではない。そういう目的で読む本もあるかもしれないが、少なくとも、読書の中心的な悦びはそこにはない。

よい本は、解答ではなく、<問い>を与えてくれる。<問い>は、不意の来訪者のようなもので、最初はこちらをびっくりさせる。だが、その来訪者と対話することは、つまり、<問い>が促すままに思考することは、やがて、この上ない愉悦につながる。自分の世界が拡がるのを実感するからである。(3ページ)

「<問い>は、不意の来訪者のようなもので、最初はこちらをびっくりさせる」とありますね。
意図的に「こういう問いを探そう」と狙いすまして手に入るものでもなさそうです。

ただ、<問い>を探し求める姿勢は必要です。

「何が見つかるかわからないけど、何が何でも、<問い>を探し出して見せる」

こういう気概が求められます。

-How-どのようにすべきか?

実は「こうやって、<問い>を見つけるんだよ」というように、確立された方法論は述べられていません。
あくまで、筆者が書いた書評を通して、「<問い>を立てるとはどういうことか?」を体感していく。
そういった趣旨の本です。

扱っている書評のジャンルは様々です。図1をご覧ください。

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図1

ここでは、皆さんおなじみの「半沢直樹」が登場する『オレたちバブル入行組』の書評をご紹介します。

筆者はこの『オレたちバブル入行組』において、「「半沢直樹」はなぜカッコいいのか?」という問いを立てています。
そして、問いに対して、次のような考察を組み立てています。
図2をご覧ください。

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図2

ざっくり説明すると、「半沢直樹」がカッコいい理由は次の2点。

  1. 不遇感を晴らしてくれる「倍返し」がカッコいいから
  2. 「本来は不可能な理想」をリアルに体現しているから

1については、我々が日々抱いている不遇感とその背景が、作品の中でも緻密に再現されています。

また、2については、「これでもか、というくらいのリアリティの追求」と「リアルの中に存在する、たった1つの非現実的=半沢直樹」がカギです。

 

こうした含蓄ある考察を、いずれの著書に対しても展開している。
これが『<問い>の読書術』の魅力です。

計25の書評が掲載されているので、読み進めるうちに、なんとなくですが「こうやって問いを立てるのか」という感覚が摑めてきます。

「答え」ではなく「問い」を探す、という点が肝です。

 

学び

本ビジネス書を通して、次の学びを得ました。

まずは、「はじめに」「まえがき」「プロローグ」から問いを探してみる

いきなり「問いを探せ」と言われても、難しいと思います。
なぜなら「答えの探し方」は習っていても、「問いの探し方」は習っていないからです。

社会に出るといきなり「問いを立てろ」「課題を設定しろ」と言われるので、困ったものです。

話が逸れました。
読書で「問い」を探す最初のステップは、「はじめに」「まえがき」「プロローグ」に着目するのがオススメです。

「はじめに」なんかには、書籍を通して答えたい「問い」や「問題提起」が書かれていることが多いです。

そして「答え」については、「おわりに」「あとがき」「エピローグ」に書かれていることが多いです。
(たまに「関わった方への感謝」だけ述べられているケースもありますが)

まずは、問いを「探す」ことから始めてみると、ハードルが低いです。

慣れてきたら、自分で問いを「作って」みる

問いを「探す」ことに慣れてきたら、次は「作って」みましょう。

例えば、先述の『オレたちバブル入行組』の問い「「半沢直樹」はなぜカッコいいのか?」については、大澤氏が「作った」ものです。

オレたちバブル入行組』のまえがきや解説などに、このような問いは書かれていません。

「良い問いかどうか=自分にとって意味があるか」です。

なので、周りの目など気にせず、自分の興味の赴くまま、気軽に問いを立てる習慣を持つと、読書がもっと楽しくなります。

明日から取れるアクション1つ

  • 問いが「はじめに」などに書かれていない本に挑戦してみる

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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