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【要約・書評】『だから僕たちは、組織を変えていける』斉藤 徹

今日は『だから僕たちは、組織を変えていける』を紹介します。

(2022/08/15追記)Audible版もついに登場したみたいなので、貼っておきます。

この本の魅力を一言でまとめると、

「これまで断片的にしか理解していなかった組織論を、すべて体系化して繋げてくれた本」

これにつきます。

例えば、

  • 学習する組織
  • システム思考
  • 心理的安全性
  • ティール組織
  • オーセンティック・リーダーシップ
  • サーバント・リーダーシップ
  • シェアド・リーダーシップ
  • ミッション・ビジョン・バリュー
  • 内発的動機と外発的動機
  • etc

こういった、いろんな流行りのキーワードがありますよね。

これら1つひとつのキーワードは、すでにたくさんのビジネス書に出てきているので、別に目新しくはないと思います。

ただ、イマイチ、それぞれのキーワードがどう関連しているのかは理解できていませんでした。

例えば、私のなかでは、「心理的安全性」と「システム思考」は全く関係のない概念だと理解していたんですね。

しかし、本書を読んでみると、「心理的安全性が担保されてはじめて、組織を変えるツールとしてシステム思考が機能するんだ」と知りました。

実は、上記に挙げたようなキーワードはすべて、一本の線で繋がっていたんですね。

本書を読み終わった瞬間、頭のなかにバラバラと散らばっていた知識たちが、1つのパズルとして組み立てられた感覚といいますか。

この感動体験をできたのが、この本を読んでみての一番の収穫でした。

『だから僕たちは、組織を変えていける』とは?

本書は、ビジネス・ブレークスルー大学(オンラインでMBAを取得できる大学院)の教授である斉藤徹氏による著書です。

起業家、経営者、教育者、研究者といった様々な顔をお持ちで、「明日から試せる実践知から、汎用的な理論まで」を幅広くカバーしている、非常に稀有な方です。

今回の本も、世界の経営学・組織論・リーダー論が「たったひとりから組織を変えていくための超実践的メソッド」に落とし込まれているんですね。

なので、「世界レベルの組織論に裏打ちされたアクション」を明日から取れるようになるわけです。


例えば、「会議の場では、批判的な発言をする人に対しても笑顔で向き合い、簡単な質問をしながら相手の発言に耳を傾ける」という行動が紹介されています。

これだけ聞くと、明日から実践できそうな内容ですよね。(批判的な発言をする人がよっぽど怖い人でない限りは・・・)

でも、この何気ない行動が、実は「心理的安全性」を作り出すために効果的だったりするわけです。

そうした「何気ない行動」と、その裏側になる「世界レベルの理論」を行ったり来たりしながら論が展開されるので、とにかく飽きません。

しかも、図解とかイラストがたくさん、少なくとも2ページに1つは差し込まれているので、「パラパラ読み」でも何となく内容を理解できます。

・・・本当に非の打ち所がない本で、驚きを隠せません。

(まだ2月ですが)今年読んだ本のなかでも、断トツで「手の込んだ本」「筆者のこだわりが込められた本」だと感じました。

そんな本書の読書メモをこちらに掲載しておきます。

同じ理念のもとでも、人を「動かせる人」と「動かせない人」がいる理由

「経営理念が大事なんです」

「利益ばかり追わずに、理念を意識しましょう」

このメッセージに対して、100%反対の人はおそらくほぼいないかと思います。

WHYから始めよ』なんかを読みこんで、丁寧に「WHY(=理念やビジョンやミッション)」を伝えてくださる方もいらっしゃいます。


ただ正直、リーダーが喋っている理念が「薄っぺらいな」と感じる瞬間、ありませんか?

私には、そういう瞬間がありました。

以前のコンサル会社にいたころのクライアント先での話です。

そのクライアントの理念は、理念経営の事例としていろんな本でも紹介されるくらい素晴らしいものでした。

私が今でも思い出すのは、その会社の理念を語る2人の課長の姿です。

A課長が理念を語っているときは、メンバーの誰もが話を聞き入っていて、1人ひとりが文字通り活き活きとした表情でした。

一方のB課長が理念を語っているときは、さっきと真逆の光景でした。何人かは内職しながら話を聞いていて、もう何人かは上の空。


その当時は、A課長とB課長とで何が違うのか、よくわかりませんでした。

パッと聞く感じ、B課長のほうがプレゼンが上手い印象でしたし、A課長は「えー」「あのー」が多かったんですよね。

なのに、A課長のほうが、なぜか「話を聞こう」と思えました。


いったい何が違ったのか?

その答えが、『だから僕たちは、組織を変えていける』に書いてありました。

「率先垂範しているか否か」

シンプルにこの違いでした。


言われてみれば、当然ですよね。

「プライベートも大切にしながら働こう」と言っているリーダー本人が毎日遅くまで残業していたら、1mmも説得力はありません。

理念と行動を常に一貫させている姿を周りに見せること。

これができているかどうかが、「理念で人を動かせるかどうか」を左右する。

もっと平たくいうと「口だけのやつに、人は動かせない」と表現できそうですね。

当たり前ですが、バカにせずに今一度、肝に銘じておきたいと思います。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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