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【要約・書評】『目的思考』山梨 広一

「目的に立ち返りましょう、目的が大事です」

おそらく、ビジネスパーソンであれば誰もが聞いたことある言葉ではないでしょうか。

目的は大事だと思いますか?と問われたら、全員がYesと答えるはずです。


一方で「いい目的とは、どんな目的か?」と問われると、答えに窮してしまいます。

いい目的の正体を知らない。だから、イケてない目的を設定してしまう。

例えば、

  • DXの推進
  • 業務の標準化
  • 情報の一元化
  • 数字の見える化
  • ~による生産性の向上

こういう目的、よく見かけますよね。

どうでしょう、イケていない感がプンプンしますよね。

「DXの推進」とか言われても、何のためにやるのかもわからないし、具体的に何をすればいいかも謎です。

「業務の標準化」とか「情報の一元化」とか「数字の見える化」もただの手段でしかありませんし、

「生産性の向上」と言われても、生産性の具体的な定義がわからない。

・・・こんな感じで、イチャモンをつけることはできます。

ただ、これらの目的がなぜダメなのか?どんな目的が良いのか?をちゃんと言語化するのは難しい。

そんなモヤモヤを晴らしてくれるのが『目的思考』です。

『目的思考』とは?

本書は、世界最高峰のコンサルティングファームであるマッキンゼーで25年間戦ってこられた著者が書いた本です。

以前同じ著者が書かれた『いい努力』という本が面白かったので、今回の本も手に取ってみました。


「なんで今更、目的の話なんて・・・」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、以前のように変化が緩やかな時代においては、上から言われた目的通りに仕事をこなしていれば問題ありませんでした。


しかし、今は変化が目まぐるしくなっています。

2年前にコロナが来るなんて誰もわからなかったでしょうし、FacebookがMetaになるなんてのも予想できなかったでしょう。

それくらい変化が激しい中なので、以前設定した目的が形骸化することもあります。

ソニーが「ウォークマンをなるべく小さくして、多くのコンテンツを詰め込むこと」を目的として動いている中、

アップルは「コンテンツとハードウェアを分けて、いつでもどこでも音楽を取り込めるようにすればいい」という発想でiPodを普及させた。

みたいな感じで、目的をタイムリーに修正していく必要が出てきました。


だからこそ、上の人が設定してくれるのを待たずして、自分でこまめに目的を考える・・・なんてことが求められていると。

だからこそ、『目的思考』が"今"大事なんだ、ということです。

良い目的と悪い目的の違いは何か?

本書を読んでみて一番の学びだったのが、「良い目的と悪い目的の違い」です。

悪い目的の条件

悪い目的は、次のいずれかの特徴を持っているそうです。

  1. 抽象的で、誰にでも当てはまる
  2. 代替指標が独り歩きしてしまう
  3. 目線が低すぎる、視野が狭すぎる

1つ目については、確かに「顧客を大切にすることが目的です」なんて言われても、、そんなの誰にでも当てはまりますよね。

A社にもB社にも当てはまる、C君にもDさんにも当てはまる、そんな目的はイケてない、ということです。


2つ目の「代替指標の独り歩き」もよく見かけますよね。

元々は「新しい企画を考える時間を生み出すために、業務効率化をしましょう」という目的だったとします。

これが勝手に独り歩きして「業務効率化を何%達成するか」だけが追求されて。

結果的に「暇な時間を増やして楽するための業務効率化」にすり替わっている、なんて話を聞いたことがあります。


3つ目の「目線や視野が狭すぎる目的」にも注意が必要です。

「よし、この商品を日本一にするぞ!」と目的を掲げても、

他社が「アジアNo1目指すぞ」とか「世界トップを目指すぞ」と言っていたら、

あっという間に置いていかれそうです。

良い目的の条件

逆に、良い目的は次の特徴を持っているそうです。

  1. 具体的で明確
  2. やるべきことが絞り込まれている
  3. こだわりが強く、継続できる
  4. 自分自身も周りの人もワクワクさせる

1つ目の「具体的で明確」について。

例えば、Googleのミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること」です。

「ユーザーに貢献すること」みたいなフワッとした目的よりも、かなり具体的ですよね。


2つ目の「やるべきことが絞り込まれている」について。

目的が具体的であればあるほど、「何をやらないか」もクリアになります。

例えば「ユーザーに貢献すること」を目的にすると、裏を返すと「何でもやります」という意味になりますよね。

ユーザーのためであれば、コンビニにパンも買いに行くし、ごみ捨てもするし、お金の管理もやります、みたいな。

まあ、ここまで酷くはないにしろ、「何をやらないか」が不明確な目的は、逆に何をすればいいかよくわからなくなります。


あとは、3つ目の「こだわりの強さ」も重要な要素ですよね。

アマゾンは「配送時間」にこだわり、吉野家は「安い、早い、上手い」にこだわる。

こんな感じで、何にこだわっているかをシンプルに表現することも大事です。


そして4つ目の「自分も周りもワクワクする」について。

これは、まずは「自分がワクワクするか」が最重要なんでしょうね。

自分がワクワク楽しそうにしていたら、その様子に興味を持ってくれた仲間が少しずつ増えてくる。

そうやって、ワクワク感がじんわりと周りに染み渡っていくような目的を作りたいものです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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