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【要約・書評】『問いのデザイン』安斎 勇樹、塩瀬 隆之

この本で解ける疑問は?

  • 問題と課題の違いは何か?
  • 良い課題設定に必要な思考過程は何か?
  • 良い問いを使ってファシリテートするために必要な技法は?


https://www.amazon.co.jp/dp/4761527439

『問いのデザイン』って?

久々に出ました「1枚でわからない!?」シリーズ。

稀にある「パワポ1枚では、魅力を言い表せないほどもの凄い本」は「1枚でわからない!?」シリーズとしてお届けしてます。
(この語彙力の無い表現には目を瞑っていただけますと幸いです)

さて、実はこちらの本、noteでいただいた投げ銭で購入いたしました。

本書は約3,000円と、普段紹介している本より高価です。

こういった本をご紹介できるようになったのも、noteにていただいた投げ銭のおかげです。

みなさまからお預かりした投げ銭を使わせていただく分、いつもより慎重に選んで手にしたのが本書でした。

何度も書店で立ち読みをして、「間違いない、この本をオススメしたい」と思った本です。いつもより自信を持って紹介いたします。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • 問いのデザインは大きく「課題のデザイン」と「プロセスのデザイン」の2つに分けることができる。
  • 「課題のデザイン」を語るにあたって、まず「問題と課題の違い」を知る必要がある。問題とは、「何かしらの目標があり、それに対して動機づけられているが、到達の方法や道筋がわからない、試みてもうまくいかない状況」を意味する。一方で課題とは、「関係者の間で"解決すべきだ"と前向きに合意された問題」を意味する。
  • 問題を捉えるためには、まず「目標」をクリアにする必要がある。目標をクリアにするためには、1)時間軸を短期・中期・長期にブレイクダウン、2)優先順位づけ、3)成果目標・プロセス目標・ビジョンへの切り分けを行うと効果的である。
  • 目標と現状のギャップを「問題」として捉え直すためには、「素朴思考」「天邪鬼思考」「道具思考」「構造化思考」「哲学的思考」を使い分ける必要がある。
  • 以上の思考を用いて抽出した問題の中から「課題」を特定するためには、1)効果性、2)社会的意義、3)内発的動機の3つの要素でフィルタリングをかけるとよい。このフィルタリングによって、「衝動を掻き立てる課題」を設定することができる。

いかがでしたでしょうか。

本来であれば、「素朴思考」「天邪鬼思考」「道具思考」「構造化思考」「哲学的思考」それぞれについて語りたい気持ちでいっぱいです。

「プロセスのデザイン」についても、目から鱗が落ちる技法がいくつも紹介されていました。

それほど、全ページにわたって、深い学びが凝縮された本でした。

課題解決力ではなく課題発見力が重視されつつある現代だからこそ、本書でいう「問いをデザインする力」を時間をかけて身につけたいものです。

学び

「問いのデザイン」に必要な「哲学的思考」の正体は…

本書を読んでいて個人的に一番感動したことがあります。

それは、1年以上前にご紹介した『はじめての哲学的思考』で登場した必殺技「本質観取」が『問いのデザイン』でも紹介されていたことです。

 

「本質観取」

再確認しますと、こんな技でしたね。

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「恋」をテーマにしながら、順に説明します。

体験(わたしの「確信」)に即して考える:
本質観取は絶対的な真理を見出すのではなく、お互いの「確信」を投げ合うことで、「共通理解」を目指す。

問題意識を出し合う:
本質観取する概念について、気になっていることや疑問点などを出し合ってみる。「恋と愛は何が違うのか?」など。

事例を出し合う:
それぞれの恋の体験を言葉にしてみる。「独占欲」「天使」「切なさ」みたいな感じ。

事例を分類し名前をつける:
事例を出し合ってみると、いくつかの本質的なキーワードが浮かび上がってくることがある。例えば、「天使」や「切なさ」といった事例は、「あこがれ」という恋の本質的なキーワードで分類する、みたいな感じ。

すべての事例の共通性を考える:
すべての事例の共通本質を言葉にしてみる。「自己ロマンの投影とそれへの陶酔」など。

最初の問題意識や疑問に答える:
恋の本質を踏まえたうえで、2で挙げたような疑問点に対して答えてみる。

https://www.biz-knowledge.com/entry/philosophy-thinking-for-beginnerより)

問いをデザインする段階で、ここまで深く本質的思考を行うと、より「解いて意味のある問い」を抽出することができます。

「そうか、哲学的思考は、問いのデザインにつながっているのか」と思わず感動してしまいました。

思考の積み重ねが「スジが良い問い」を生む

以上のような「本質観取」などの努力を積み重ねてはじめて、やっと「スジが良い問い」と出会うことができるのかもしれません。

 

「スジの良い問い」

そうです、以前ご紹介した、あの象限の話です。

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以前、以下の記事にて、「良い問いとは何か?」について考察をしました。

 

この記事で「良い問いとは何なのか?」までは導くことができたのですが、「どうすれば良い問いを導くことができるか?」は以前答えが出ないままでした。

今回『問いのデザイン』と出会ったことで、やっと良い問いを導く方法を知ることができました。

本との出会いは、まさに旅そのものですね。

改めて読書の魅力を痛感した瞬間でした。


https://www.amazon.co.jp/dp/4761527439

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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