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【要約・書評】『デザイン思考が世界を変える』ティム ブラウン

この本で解ける疑問は?

  • 流行りの「デザイン思考」の正体は?
  • 「論理思考」と「デザイン思考」の違いは?
  • 組織で「デザイン思考」を使うときの注意点は?


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『デザイン思考が世界を変える』って?

わかるようでわからないビッグワード筆頭の「デザイン思考」。

この思考法の目的や方法論について、皆さんは説明できますでしょうか?

ちなみに私はというと

「何となくすごそう」

「もう論理思考は古いのかな」

…と、こんな感想レベルの印象しか抱いていませんでした。「説明できるレベル」とは程遠いですね。

そんな状況から早く脱出すべく読んだのが『デザイン思考が世界を変える』でした。

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • デザイン思考を使う目的は「人々のニーズを掘り出し、飛躍的発想で生活を豊かにするため」である。

  • まず心構えとして、「有用性」「技術的実現性」「経済的実現性」などの制約を喜んで受け入れる意識を持つ必要がある。その際、3つの制約条件を全て解決しようと身構えてはいけない。3つの制約条件の「バランスを取る」べきである。

  • 次に考える順番について押さえる。洞察(他者の生活から学び取る)→観察(人々のしないことに目を向け、言わないことに耳を傾ける)→共感(他人の身になる)、の順番で考えることで、ニーズを需要に変えることができる。

  • 洞察→観察→共感の各プロセスで、「発散と収束」を繰り返すとよい。まずは選択肢をどんどん並べていき、並べ切った後は選択して収束させていく。

  • ある程度「洞察→観察→共感」の流れで考えた後は、早い段階でプロトタイプを作る。まずはスケッチなど、実体を伴わないプロトタイプで構わないので作ってみる。そして、何人かでプロトタイプのストーリーを演じながら、徐々に形作りを進める。他者に見せられるレベルのプロトタイプが完成したら、いち早く世に放ってみて、フィードバックを取りにいく。

  • 最後に、これらの「デザイン思考」を組織に当てはめるときの留意点を挙げる。まず、イノベーション・ポートフォリオを「新規商品・既存商品」と「新規消費者・既存消費者」の2軸マトリクスで組んでみる。そして、自社で進めようとしているプロジェクトが、マトリクスの4象限にバランスよくマッピングされるかを確かめる。

    バランスよくプロジェクトを配置できたら、各プロジェクトにデザイン思考を取り入れていく。その際、「早めに何度も失敗する」など、いくつかのポイントを気にしながら進めるとよい。

いかがでしたでしょうか。

デザイン思考の輪郭が少し掴めたのではないでしょうか。

より具体的な方法論については、もう1~2冊ほど読む必要がありますが、
「デザイン思考の概要や全体観」を知るには、この一冊で十分です。

学び

論理思考とデザイン思考は「セット」で考える

本書を読む中で、個人的に一番気になったのは次の問いです。

「論理思考とデザイン思考の違いは何か?」

これ、結論からいうと「ほとんど変わらない」と思います。

より正確に言うと、「デザイン思考は、論理思考の一部のプロセスを補強する存在」です。

 

まず、「論理思考」のプロセスをざっくり図にすると、こんな感じになります。

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このプロセスと「デザイン思考」がどう関係してくるか。下図に整理してみました。

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まず、論理思考では「解くべき問題」を特定しますよね。

名著『イシューからはじめよ』でも、まずは「イシュー=第一に白黒つけるべき問題」を定義すべしだと解説されています。

ただですよ。

いきなり「イシュー=解くべき問題は何ですか?」と言われても困りますよね…

「イシューを見つけるための方法論」が必要です。

例えば、データを見たり、現場の人間にインタビューしたり、色々と手足を動かす必要がありますよね。

この「イシューを見つけるための方法論」の1つが、デザイン思考でいう「洞察→観察→共感」です。

現場の人間を徹底的に観察したりインタビューして共感しながら、「これが本質的な問題なのではないか?」と洞察する。

こうしたデザイン思考のプロセスは「解くべき問題の特定」のために使っていると解釈できます。

 

次に「解決策の洗い出し・評価」について。

論理思考であれば、MECE(漏れなくダブりなく)に解決策を洗い出しますね。

でもMECEに洗い出すのが難しい場合だってあります。

そんなときは、ブレインストーミングをして、解決策をどんどん出していきますよね。

解決策をたくさん出した後は、グルーピングなどをしながら、徐々に絞っていきます。

この工程も、論理思考とデザイン思考で同じことをやっています。

 

最後に「解決策の検証」について。

解決策を実行した後は、それを検証して改善していかねばなりません。

この「解決策の検証→改善」を素早く行うための手段として、デザイン思考の「プロトタイプ」が重大な役割を果たします。

ここでも、「論理思考のプロセスを、デザイン思考が補強する構図」が見て取れますね。

 

ざっくりとではありますが、以上のように俯瞰してみると、「論理思考とデザイン思考に大きな違いは無い」ことがわかります。

ではなぜ、世の中的に「論理思考とデザイン思考は違う」と認知されているのでしょうか?

それはやはり、デザイン思考を考案した人が、「デザイン思考を早く流行らせたかった」からでしょう。

流行りを作るためには、「世の中の多くの人が知っている物事と、対比でコントラストを効かせながら」広げていったほうが効率的です。

そのコントラストの対象として選ばれたのが、すでに大流行していた「論理思考」だったのでしょう。

 

…とまあ、憶測を述べてみましたが、そんなことはどうでもいいですね。

一番気をつけねばならないのは、本質を見失って

  • 論理思考はもう古い、必要ない
  • デザイン思考さえできれば、今後はやっていける

…こんな勘違いをしないことです。

安易に二項対立に飛びつかずに、

  • 「vs」ではなく「with」ではないか
  • 「or」ではなく「and」ではないか

…と、健全な問題意識を持ち続けることが大事でしょう。

恒例の、自戒の意を込めて。

明日から取れるアクション1つ

  • 図書館やカフェで、ビジネス書を読む人を見つけて「洞察→観察→共感」プロセスを回してみる。(怪しまれない程度に)


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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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