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【要約・書評】マッキンゼーの社内資料が書籍化『完全無欠の問題解決』

世界最高峰のコンサルティングファームであるマッキンゼー社で使用されてきた社内資料が、今回書籍化しました。

それが『完全無欠の問題解決』です。

ちまたに出回っている問題解決本やロジカルシンキング本の著者経歴を見てみてください。

有名な本のほとんどは、マッキンゼー出身の方による著書です。

企業参謀』『ロジカル・シンキング』『問題解決プロフェッショナル』などは、まさに私たち日本人にとって、問題解決本のバイブルといえるでしょう。

そのマッキンゼーにて「伝説の社内資料」と評されている内容が、『完全無欠の問題解決』に書き下ろされているそうです。

・・・もう買わない理由がありませんよね。

だって、バイブル・オブ・バイブルですよ?


そんな期待に胸を膨らませながら、本書を読んでみましたが・・・圧巻でした。

世に出回っている問題解決本のエッセンスがギュッと無駄なく凝縮されていました。

しかも、出てくる具体例の解像度の高さには驚愕させられます。「え、こんなに生々しい企業データ、使っちゃっていいの?」と思うくらいリアルな情報も出てきます。

読めば読むほど、「完全無欠の問題解決」の底が知れなくなる。だから、何度も読んで、実践して、また読み直したくなる。

そんな不思議な力を持った本でした。

『完全無欠の問題解決』とは?

本書は、マッキンゼーの元グローバル・ディレクターと元パートナー(…とりあえず、外資系企業の超えらい人)が書いた、問題解決スキルを完全網羅した本です。

英語版の本もAmazon430レビューで星4.5と高評価。

しかも、日本語への翻訳を担当された方もマッキンゼー出身の方なので、同社の考え方や問題解決のプロセスを熟知されています。

ですので、和訳文も非常にわかりやすく、違和感なく読むことができます。

そんな本書の目次はこちら。

  1. 「完全無欠の問題解決」をマスターする
  2. 問題を定義する
  3. 問題を分解し、優先順位を付ける
  4. 作業計画を立てる
  5. 「経験則」で問題をざっと分析する
  6. 「奥の手」で問題を深く分析する
  7. 結果をまとめ、ストーリーで伝える
  8. 不確実性に対処する
  9. 「厄介な問題」を解決する
  10. 優れた問題解決者になる

なかでも、問題定義のためのフレームワークが有用すぎたので、考察も交えて紹介させてください。

『完全無欠の問題解決』をもとに作成

よい「問題定義」とは何か?

本書によると

本書によると、よい問題定義をするためには、以下の問いに答える必要があります。

  • 意思決定者
    誰に何をしてもらう必要があるのか?
  • 取り組みを成功に導く基準
    意思決定者は、何をもって成功だと判断するのか?
  • 意思決定者に作用する主な力
    決定への懸念や問題は何か?
    相反する議題にどう対処するか?
  • 解決のための時間軸
    答えはどのくらい早く必要か?
  • 問題の境界線/制約
    触れちゃダメな聖域はあるか?
    検討されていないものは何か?
  • 求められる精度
    どのレベルの精度が必要か?

いずれもハッとさせられる観点ですよね。

問題定義をする際は、この観点を書いたワークシートを用意しておけば、それだけで仕事の質がグッと上がりそうです。

特に大事だと思ったのは、「問題の境界線/制約」の部分。

例えば、「当社の利益を最大化するために、どうすればいいか?」という問題定義だと、扱う範囲が無限大に広がってしまいます。

そうではなく「当社の利益の鍵である"在庫の回転率"をXX%上げるために、どうすればいいか?」のほうが、考える範囲もグッと絞ることができます。

しかし、考える範囲を絞りすぎると、ちっぽけな問題解決になりかねません。

考える範囲をどの程度にするか?このグレーゾーンを突き詰めるところが、問題定義の難所であり差がつくポイントなのかもしれません。


以上が、『完全無欠の問題解決』で語られていた問題定義の観点でした。

問題解決の最初のプロセスゆえに、この問題定義をミスると、後続のプロセスが全てパーになってしまう。問題解決において一番大事なプロセスかもしれません。

ってことで、もう少し、この問題定義について理解を深めるために、他の本にも目を向けてみましょう。

『イシューからはじめよ』によると

同じ系統の本に『イシューからはじめよ』があります。

本書の著者である安宅氏も、マッキンゼー出身の方です。

本のタイトルにあるイシューとは「今ここで解決すべき問い」のこと。

つまり、『完全無欠の問題解決』で語られている「問題定義」と同様のものと考えて差し支えありません。

では、『イシューからはじめよ』で語られている、よいイシュー(問題)の定義とは何か?

  • 本質的な選択肢で表現されていること。その問題を解くと、その先の方向性を大きく左右するものであること。
  • 深い仮説(常識を覆すくらいの洞察・新しい構造の発見)があること
  • 答えを出せること

シンプルですが、読めば読むほど深みを感じます。


例えば、架空のイシューを設定してみましょう。

「今の仕事を辞めて、田舎で週3日勤務のフルリモートが可能な職種につく」のか「今の仕事を続ける」か?

  • どちらを選ぶかによって、家族もふくめて働き方や住む環境が大きく変わります。本質的な選択肢で表現できています
  • 田舎でフルリモートでほどほどに働くほうが、自分には向いているんではないか?という深い仮説もあります
  • 答えを出すことは可能です

…まあ、あくまで「私にとって」意味のあるイシューですが。

でもなんとなく、良い問題定義の輪郭をつかめてきた気がします。

まとめ

以上、『完全無欠の問題解決』についてご紹介してきました。(途中、問題定義の話で脱線しちゃいましたが)

まとめると

  • 本書は、世界最高峰のコンサル会社マッキンゼーの問題解決プロセスが全部詰まった本。世の中の問題解決本の祖先みたいな本
  • 具体的には「①問題の定義→②問題の分解→③優先順位づけ→④作業計画→⑤分析→⑥分析結果の統合→⑦ストーリー化」について、376ページに渡って書かれている
  • 中でも、問題定義の観点の話は学びが深すぎて、読む→実践→読む…を100回くらい繰り返さないと身につかなそう。それくらい貴重なノウハウ

といった感じです。問題解決本の購入は、この本で終わりにしましょう。(自分へのメッセージです)

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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