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【要約・書評】「変化を嫌う人」を動かす

  • 今の業務を変えたくないから、とりあえず抵抗する。
  • すごい合理的だし効果ありそうな提案だけど、変える労力のほうが気になりまくるから抵抗する。
  • 業務が自動化されると労力はゼロになるけど、自分らの仕事まで無くなりそうだから抵抗する。
  • Aさんがリーダーだと、なんか気に食わないから抵抗する。

・・・みたいな感じで、抵抗された人、抵抗してみた人、それぞれいらっしゃるんじゃないでしょうか?
私は、DX(デジタルトランスフォーメーション)とかを推進する機会が多いのもあって、こういう抵抗によく合います。
新しくシステムを導入しようとすると「操作方法を覚えるのが面倒くさい」と非難され。
じゃあ、面倒くさいのを取り除くべく、メール送信を自動化しようとすると「1人ひとり真心を込めて手作りでメールを書くのが大事だ」と非難され。
あとは、自分とまったく同じことを、別のBさんが話すと、すんなり納得してもらえたり。

もう何が何だかわからん・・・と思った方にオススメしたいのが、
本書『「変化を嫌う人」を動かす』です。

『「変化を嫌う人」を動かす』とは?

本書は、世界的な経済新聞「ウォールストリート・ジャーナル」でベストセラーに選ばれた本です。
しかもこの本の帯にはなんと、マーケティングの権化of権化フィリップ・コトラー氏の推薦文が書いてありました。
コトラー氏が「新しいことを始めようとしているなら必ず読むべき本だ」と書いています。
なので、何らか新しいことを始める人は、読みましょう。
新しいことを一切やらない、旧態依然オブザイヤーな方は、そっと画面を閉じてください。

この本では、変革を推し進めようと意気込んでいる人を大いに助けてくれる考え方が語られています。
通常、何か提案を通したいときは「提案の魅力」を語りがちです。
しかし、それだけでは人は動きません。
ではどうするかというと…相手が受け入れたくない理由=「抵抗」に目を向ける必要がある。
そのことを、本書は教えてくれます。

本書によると、「抵抗」には次の4種類があります。

  1. 惰性:慣れているものにどどまろうとする欲求
  2. 労力:変化に必要な努力・コスト(価値より労力が気になる)
  3. 感情:変化に対する否定的感情(アイデア自体への反応)
  4. 心理的反発:変化させられることへの反発(アイデア推進者/方法への反応)

この4つの切り口を知っておくと、冒頭に述べたことも説明ができます。

  • 今の業務を変えたくないから、とりあえず抵抗する。←惰性
  • すごい合理的だし効果ありそうな提案だけど、変える労力のほうが気になりまくるから抵抗する。←労力
  • 業務が自動化されると労力はゼロになるけど、自分らの仕事まで無くなりそうだから抵抗する。←感情
  • Aさんがリーダーだと、なんか気に食わないから抵抗する。←心理的反発

この本を読むと、惰性・労力・感情・心理的反発それぞれの事例と対処法が隅々まで理解できます。
事例の話とか読んでいると、頷きが止まらなくなると思いますよ。
そんな本書の学びを紙1枚にまとめたのが、こちらです。

抵抗勢力を動かす必殺技「危機感の上書き」

本書の学びに付け足して、以前わたしがコンサル時代に教わった「抵抗勢力を一撃で黙らせる必殺技」についても書いておこうかと。

それは「危機感の上書き」です。

本書で書かれていたとおり、何かを変えようとすると、必ず抵抗勢力が現れます。
これは、抵抗勢力になっているその人が悪いわけではなく、もう人間のDNAというか本能のせいなので、仕方がありません。

個人的にしっくり来ている、抵抗勢力が抵抗する理由。
それは「自己保存の本能」です。
この言葉は、USJを建て直した方として有名な森岡毅さんの本『マーケティングとは組織革命である』に出てきたものです。

やっぱり、何か変わるということは、少なからず、人間の生存を脅かすものなんです。
例えば、印鑑を電子署名に変えるにも、「もし新しいシステムを使いこなせなければどうしよう・・・」と大なり小なり誰もが思うわけです。
だからまず、抵抗勢力に足止めを食らったときは、こう思うようにしましょう。
「ああ、個体としての生存が脅かされているから、必死に抵抗してんだな。こいつら」と。
そう思うと、抵抗勢力のやつらが可愛く見えてきます。

しかし、抵抗勢力をただ「可愛いな」と見つめているだけでは何も変わりません。
じゃあどうするか?
「危機感の上書き」、これを食らわせてやりましょう。
危機感の上書きとは何かというと「変わらないほうが、逆にヤバいぜ?」と思わせるということです。

つい、抵抗勢力を攻略する際に「変わることによる魅力・メリット」を訴えがちです。
ただ、これは本書にも書かれていたとおり、あまり相手には刺さりません。

私も、手作業の業務を自動化するプロジェクトを何本かやりました。
ただ「これをやると、業務時間が毎月100時間削減されるんですよ」と説明しても
「でも新しいシステムの使い方を覚えないといけないよね。それにシステムが予定どおり動かないのも怖いな」と抵抗されるケース、けっこうあるんですよ。

一方で、「変わらないことによるデメリット」を訴求すると、相手にぶっ刺さることが多いんですよね。
「もう、あのチームも、あのチームも、とっくにこんな業務は自動化していますよ。自動化できていないの、あなたのチームだけです。ま、別にいいですけどw」
・・・と話して、「このまま取り残されることへの危機感」へと上書きをしてあげます。
すると、びっくりするくらい、提案を受け入れてもらいやすくなります。

いま述べたのは、私がずっとコンサル時代~事業会社でDXをやる中で、苦労して掴み取った方法の1つです。
しかし、今回ご紹介した『「変化を嫌う人」を動かす』を読むと、次から次へと、抵抗勢力の攻略法が出てきます。
ゲームをやっていて、こっちは苦労して何回もやられて何時間もかけてレベル上げして中ボスを倒したのに、攻略本を読んだ友人は10分で中ボスをクリアしている。
・・・ちょっと良い例えが思い付かなかったですが、本書を読んでそんな気持ちをいただきました。

とりあえず、この本、超オススメです。

  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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