私にとって、もらうのは好きだけど、あげるのは嫌いなもの。
それは、フィードバックです。
もらうのは本当好きなんですよ。オブラートに包まれていない、クリティカルなやつほど大好物です。
だって、摂取すればするだけ成長できるじゃないですか。
ピンポイントで、私が伸ばすべき/改善すべき点を指摘してもらえるんですよ?
わざわざ、「どこをどうやって伸ばすべきなんだろうか?」と自分で考える手間も省けます。
「フィードバックください!おなしゃす!」と言って、ビシバシとフィードバックを率直に浴びせてくれる職場は最高だと思います。
そういう意味だと、鋭利なフィードバックを投げまくってくれたコンサルティングファームは、ファーストキャリアとして最適だったなと。
・・・しかし、世の中そんな人ばかりではありません。
自分から「フィードバックください」と言ってくる人は、めちゃくちゃ少ない。
本当、全然見かけないんですよね。
むしろ、フィードバックをもらうのを恐れている人も結構います。
何かを指摘したときに「ありがとうございます」と口では言うものの、内心どう思っているんだが、わかったもんじゃない。
いつの間にか嫌われて、同僚同士の会話のなかで愚痴の主人公として祀り上げられているかもしれません。
・・・とかを考えていると、もうフィードバックするのが面倒で仕方ない。
しかし、フィードバックしないといないで「どうして、言ってくれなかったんですか」なんて言われてしまう。
ああ、もう、どうすりゃいいんだよ!と思っては、フィードバック関連の本を手に取ってみました。
ただ、全然いい本が見つからない。
このブログであまりフィードバックの本を取り上げていないのも、このテーマについて良本が無かったからです。
だがしかし、今回、ついに神本を発見してしまいました。
『みんなのフィードバック大全』です。
『みんなのフィードバック大全』とは?
本書は、株式会社コンカーの代表である三村氏が書かれた本です。
三村氏の本といえば、約4年前に『最高の働きがいの創り方』の書評も書かせていただきました。
著者については、前回の書評記事から紹介文を引用しておきます。
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【要約・書評】『最高の働きがいの創り方』三村 真宗
この本で解ける疑問は?
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著者は、1993年に日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパンに入社し、13年に渡って新規事業リードや社長室長を務められました。
当時の就職活動では、「異色」の新卒キャリアでしょう。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、2011年から現職に就かれています。
著者が代表を務める株式会社コンカーは、なんと4年連続ベストカンパニー受賞。
従業員100~999人規模部門で、働きがいのある会社ランキング1位も獲得。
前回の『最高の働きがいの創り方』では、経営戦略として「ヒトによる競争力の最大化」の方針のもと、「働きがいのある職場のつくり方・仕組み」が紹介されていました。
筆者の主張を紐解くに、働きがいは次のように因数分解できると理解しました。
働きがい=働きやすさ×やりがい
そしてマズローの欲求5段階説に照らすと、
・生理的欲求と安全の欲求=働きやすさ
・社会的欲求=働きやすさとやりがいの中間
・承認欲求と自己実現欲求=やりがい
…このように整合するそうです。
このうち、やりがいを掻き立てるカギが、フィードバック。
ポジティブフィードバックは承認欲求を、
ギャップ(ネガティブ)フィードバックは自己実現欲求を、
それぞれ刺激する。そんな位置づけです。
なんとも、わかりやすい整理です。
しかし、わかりやすい整理ゆえ、頭では理解できますが、とはいえ・・・
冒頭に書き綴ったように、私、フィードバックを与えるのが大嫌いなんです。
繰り返しになりますが、フィードバックをもらうのは大好きです。
フィードバックを積極的に欲しがる人にフィードバックを与えるのも大好き。
でも、「特にフィードバックを求めていない人」へのフィードバックは大嫌い。
フィードバックしたら「いや求めてない。何を偉そうに」と言われ、
フィードバックしなかったら「気づいてたんなら、言ってよ」と言われる。
フィードバックをしようがしまいが、ぶーぶー文句を言われる。
いったいどうすればいいのよ?
・・・と悩んでいましたが、p60あたりからモヤモヤが吹き飛びました。
本書から学んだフィードバックの仕方を私なりにメモすると、以下のように整理できます。
私の理解用に解釈を交えて加工した部分もあるのですが、非常に具体的で納得感満載のノウハウがギュッと詰まっていました。
年下マネジャー的にフィードバックで気を付けていること
本書で学んだことを踏まえつつ、私自身のフィードバックの仕方についても振り返ってみたいなと。
フィードバックなんて嫌いだ!とぬかしている私自身も、新卒3年目に、年上部下を預かる機会がありまして。
そりゃ戸惑いますよね。生まれてこのかた、後輩を指導することはあっても、先輩を指導する機会なんてないわけですから。
学校でも「先輩へのフィードバックはこうしなさい」なんて習わないですし、そんな本も出回っていません。
そんな中、試行錯誤して「これ、やっといてよかったな」と思ったことを書き留めておきます。
自分のスタンスを明示する
最初にやったのはこれ。
「最初に言っておくと、私は超生意気です。づけづけモノを言うかもしれません。不器用であることを謝っておきます。ただ、これだけは言っておきたいのですが、いずれも"〇〇さんと一緒にいい仕事がしたい"という本心のもとの言動です。あとコンサルという業界においては私がちょっぴり先輩だったりするので"コンサル的にはこうやるとよいかも"的な話はお力になれるかと。だから"不器用ながら、なんかフィードバックしようとしてんだなw"くらいな感じで、接してもらえればと思います」と、自分のキャラや本心を示しておく。
すると、相手も「しゃーないな、こいつの言うことにも、耳を傾けてやるか」くらいには思ってくれるはずです。
本書の表現を借りると
・相手の成長を願い
・相手に関心を持ち
・気恥ずかしさを捨てる
…というマインド面を示すことができていたのかもしれません。(ちょっと無理やり当てはめた感ありますがw)
ポジティブフィードバック=敬意+感想+具体的な学び
年下上司によるポジティブフィードバックの方程式があります。
ポジティブフィードバック=敬意+感想+具体的な学び
これです。
1つ目は、敬意。これは当然ですよね。
メンバーだろうと何だろうと関係なく、人生の先輩は自分よりも経験も専門性も秀でたものをお持ちです。
お世辞ではなく、事実としてそうです。
その姿から何か学ばせていただく。そんな姿勢で、とにかくリスペクトを示す。これが第一歩かと。
例えば、
・ちゃんと挨拶する
・エレベーターに一緒に乗るときは、なるべく扉側に立つ
・ドアは先んじて開けて、相手が通れるようにする
・飲みに行ったときは、空いたグラスがあれば「次、何飲みます?」とお声かけする
…などなど。こういう一挙手一投足の積み重ねだと思うんですよ。
これを、上司だからって、エレベーターの後ろに腕組んで陣取るとか、そういうのはリスペクトが欠けていると思うんですよね。
敬意というのは、些細な行動にあらわれます。
2つ目は、感想。
これはちゃんと説明すると、「評価をしない」「感想を述べる」ということです。
「これ、いいですね」と年下に評価されると、どう思うでしょうか?
私は何とも思いませんが(むしろ嬉しい)、人によっては「は?」と思うらしいです。
だから、なるべく「評価」をしないようにしたほうがいいです。
代わりに「素直な感想」を述べるようにしてみました。
「●●さんの資料、めちゃくちゃ勉強になりました。僕もパクらせてもらいますねw」とか
「●●さんのさっきのプレゼン、XXの言い回しとか、僕は思いつかなかったです。どうやって思いついたんですか?」とか。
とにかく、すごい講師の話を聞いた学生のスタンスで、感想を述べてみてください。嫌な顔されないと思うので。
3つ目は、具体的な学び。
「勉強になりました」と感想だけを言われても、相手からすると「ほんとかよ?」と思ってしまうかも。
なので、「●●さんの資料、めっちゃ刺さりました。p8の課題の真因特定の整理の図と、p12のアクションAのインパクト試算の式とか。あれ、どうやって考えたんすか?」みたいに、具体的に絵が浮かぶレベルでお伝えする。
これら3つを足し合わせると、年上の方にも上から目線になることなくフィードバックできるのではないかと。
ギャップ(ネガティブ)フィードバック=低姿勢+ファクト+自己決定感
一方で、ギャップ(ネガティブ)フィードバックをするときは、骨が折れます。
私もこれまで、一応年上・年下・チーム内外問わず、このギャップフィードバックは少なくとも100回以上はやりました。
何だかんだ、「ん?」と思うものは、放っておけない性格なので。
そんなこんなで、言いたい放題ギャップフィードバックを言って、「ざけんな!」と言われたりもしながら、私なりに「これかな?」と思えた方程式があります。
ギャップ(ネガティブ)フィードバック=低姿勢+ファクト+自己決定感
これです。
1つ目は、低姿勢。
「ちょっと●●さんに相談させてもらってもいいですかね・・・?」「僭越ながら、ちょっと●●さんにお伝えしたいことがありまして・・・」と、低姿勢で入る。
こうすることで、「なんだよ?」と思いながら「しゃあない、聞いてやるか」と思ってもらえるかなと。
2つ目は、ファクト。
低姿勢で入ったあとは、とにかく自分が目にしたファクトを簡潔にお伝えします。
・ファクトとして、納期から何日遅れたのか
・成果物のどこが、どうおかしいのか(類似の成果物やセオリーと比較しながら)
・クライアントから実際にあがった声はどんなものがあったのか
…これらファクトを淡々と伝えます。
ここで述べるファクトは、ちゃんと裏を取ったうえで、事前にメモに書き出しておきます。
ファクトが間違っていると、一気に場も関係性も崩れるので。
そんな下準備のもと、ファクトを淡々と伝える。
こうすることで、相手に「あ、ちゃんと聞かなきゃな」と、ある種の緊張感を抱いてもらう必要があります。
3つ目は、自己決定感。
まず提示したファクトについて「XXと私は見聞きしていますが、相違ないですか?」と、絶対に相手にお伺いを立てることが大事です。
間違っても決めつけてはいけず、情状酌量の余地を残しておかねばなりません。
そうやって、まず、目の前のファクトについて合意する必要があります。本書でいう「空・雨・傘」の「空」を合意すること。すべてはそこからです。
そして、ファクトが起きた原因は何か?原因を踏まえてどんなアクションを取るか?についても、メンバーご自身の口でなるべく言ってもらう必要があります。
自分で話したことだからこそ、自分で決めた感が生まれる。
時間がいくらかかろうとも、自己決定感を抱いてもらう。ここは外してはいけません。
・・・と、私が独自に気にしていたことを、本書の学びと照らしながら振り返ってみました。
いくつかは、本書の教え通りにできていた点があり、ホっとしました。
一方で、以下の点は、本書の学びと照らすとダメだったなと。
- ギャップフィードバックについても、ファクトベースで精緻にテキストで書いて送信する(これだと、キツイ印象を与えてしまう)
- ギャップフィードバックは、じっくりファクトを集めたうえで、時間をかけて準備して伝える(これだと、タイムリー性がなく、「なんでもっと早く言ってくれないの?と不信感につながる)
これらの点は、本書を読んで「しまった」と思い知らされたポイントでした。
今の内に気づけてよかったです。
そして「フィードバックなんて嫌いだ」と思っていたところ、本書を読んで「フィードバックは実は、周りの人にやりがいを持ってもらうために必要な、前向きなものだ」と思えたのが、一番の収穫かもしれません。
筆者の三村氏には感謝しかありません。
いやーそれにしても、この本、良書すぎました。今年読んだ100冊近くのなかで、BEST5には確実に入る本でした。