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【要約・書評】『知覚力を磨く』神田 房枝

この本で解ける疑問は?

  • 思考力のさらに上流にある力とは?
  • 見えないものを観る「知覚力」とは何か?
  • 知覚力を磨くにはどうすればよいか?

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『知覚力を磨く』って?

さて、突然ですが、次の画像は人間の胸部をCTスキャンしたものです。

これを見て「異常」を発見してみてください。

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(出典:https://www.gizmodo.jp/2013/02/_83.html

「異常を見つけてくださいと言われても…私、専門家じゃないしな」と思われるかもしれません。

しかしこの画像は、医師としてのトレーニングを受けていなくとも、異常を発見することができます。

正解は、右上にいる「ゴリラ」です。

実は、24名の放射線医師のうち20名が、このゴリラに気づけなかったそうです。

それほどに、我々は「観ているつもりで見えていない」ことがわかります。

…おそろしいですよね。

おそろしいと思われた方は、この『知覚力を磨く』をオススメします。

 

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(画像をクリックすると、PDFが開きます)

  • 知覚力とは「眼の前の情報を受け入れ、独自の解釈を加える能力のこと」である。この能力は、知的生産の最上流に位置付けられる。
  • この能力を磨くためには4つの方法がある。
    ①「知識」を磨く
    自分が関わっている仕事と”ゆるく”関連する分野を意識して学ぶ
    ②「他者」の知覚を取り入れる
    自分が持っていない知覚を、選り好みせずに「読書」で吸収する
    ③知覚の「根拠」を問う
    「なぜその解釈に至ったか?」「なぜその事実が正しいと言えるのか?」などを自問自答する
    ④見る/観る方法を変える
    自分の眼が「何を/どのように見るのか」をコントロールする。この④は、半自動的に行われるため、最も自力でコントロールすることが難しい。その前提のもと、④を磨く視点として「何を見るか?」「どう見るか?」を考える必要がある。
  • 「何を見るか?」については、「絵画」を観るべきである。その理由は3つある。
    ①バイアスが介在しづらい
    絵画には非日常が描かれているため、バイアスが介在しにくい
    ②フレームで区切られている
    絵画はアーティストが世界の一部を鑑賞者のために切り取ってくれる
    ③全体を見渡す力がつく
    個別の要素だけでなく、要素が置かれた文脈や周りとの関係性にも目を向ける必要がある
  • 次に「どう見るか?」については、次の4ステップを踏むとよい。
    ①全体図を観る
    ②組織的に観る
    ③周縁部を観る
    ④関連づけて観る

いかがでしたでしょうか。

知覚力を磨く』の骨格はお示しできたかと思います。

しかし、この本の一番見どころは、具体例として引用されている「絵画や偉人たちの名言と、それらに対する筆者の解釈」です。

絵画や偉人たちの言葉を、筆者がどう知覚(受け止め、解釈しているか)しているか?

筆者の知覚力そのものを表現しているのが、この『知覚力を磨く』という本です。

知覚力は何たるかを知りたければ、本書を読みながら、筆者が知覚したプロセスを辿ってみるのが一番の近道です。

いつかは筆者のように、「え、そんな解釈の仕方があるのか…」と誰もが驚く知覚力を手に入れたいものです。

本当にオススメの一冊です。

学び

観察とは何なのか?

知覚力を磨く』を読んでいて、個人的に一番印象的だったのが「シャーロックホームズ」の引用です。

ホームズ
「君は見てはいるけれど、観察していないね。その違いは明らかだ。たとえば、君は玄関からこの部屋につながる階段を頻繁に見ているよね」

ワトスン
「しょっちゅうね」

ホームズ
「どのくらい頻繁に?」

ワトスン
「えーと、何百回でしょうね」

ホームズ
「では、何段あるのかな?」

ワトスン
「何段かだって?わかりませんよ」

ホームズ
「まったくそういうことなんだ!君は観察していない。ただ見ていることは見ているけどね。そこが私のポイントだ。私は17段あることを知っている。なぜなら私は見ているし、観察することも両方しているからね」

p158

階段を観察して「17段あること」がわかれば、

「じゃあ、17段を昇るのにどれくらいの時間を要するだろうか?」

「階段を昇るリズムから察するに、今昇ってきている人は誰だろうか?」

…などの推察も可能になります。

 

観察とは「観て察する」と書きます。

つまり「何らかの示唆を出せるレベルまで、物事を観ること」なのかもしれません。

 

…と、こんな風に、本書の1ページだけ読むだけでも、このように深い学びがあります。

それくらい、この『知覚力を磨く』は読みごたえのある本でした。

いつも左脳寄りの本を読んでいたので、余計に心に突き刺さりました。

良書との出会いに感謝ですね。


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  • この記事を書いた人

Yusuke Motoyama

外資系コンサルティング会社を経て、経営大学院に勤務。年間300冊読むなかで、絶対にオススメできる本だけを厳選して紹介します。著書『投資としての読書』。 Books&Apps(https://blog.tinect.jp/)にもたまに寄稿しています。Amazonアソシエイトプログラム参加中。 執筆など仕事のご依頼は、問い合わせフォームにてご連絡ください。

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