「何か新しいことに挑戦しよう」
「何かを変えよう」
そう決心して動き始めたとき、必ず現れる刺客たち。
それが「抵抗勢力」です。
- こちらが何を提案しても、腕を組み、首を傾けては「ああでもない」「こうでもない」と批判を浴びせてくるだけの人
- 会議中は息をひそめているかと思いきや、裏で「どうせ上手くいかないよ」とネガティブキャンペーンをしている人
これまでコンサルの経験を通して、色々な企業の現場で、色々な抵抗勢力を見てきましたし、戦ってきました。
同じ提案を同じ人に5回以上ぶつけて、議論しまくったこともあります(笑)
そうやって戦いに明け暮れる中で、見えてきたことがあります。
- 抵抗勢力にはどんなタイプがあるのか?
- なぜ抵抗してくるのか?
今回は、これらの疑問についてお答えします。
世の中は2種類の人間で成り立っている
すごく議論をシンプルにすると、世の中は以下の2種類の人間で成り立っています。
- あるべき姿を起点に考える人
- 現状を起点に考える人
あるべき姿を起点に考える人は「ゼロベースで考えると、本来の目的はこうあるべきだよね」「この目的を達成するためには、どんな手段が取り得て、どんなステップで取り組んでいけばよいだろうか?」…と話を進めていきます。
一方、現状を起点に考える人は「今のやり方を前提にすると」という枕詞から話を進めていきます。
そして経験則では、あるべき姿を起点に考える人は少数で、現状を起点に考える人が多数。ちょうど下図のピラミッドのような分布になっています。
このピラミッドを前提とすると、「変革を推進しよう」と意気込む少数の人々は、「変わりたくないよ!」と言っている多数の人々に、「多数決」で負けてしまう構図になっている。このようにも解釈できます。
何か変革をしようと新しい提案をすると、「それは今のやり方を前提とすると、できません」と言われてしまう。
「そりゃそうでしょ。今のやり方を変える提案をしているんだからさ…」と言いたい気持ちを押さえつけて、何とか頑張って説得を繰り返す。
でも如何せん、抵抗勢力の数が多いので、変革をしたい人が徐々に疲弊していく。
そうやって多数決の論理で、変革を頑張ろうとしている人々がフェードアウトしていきます。
※『天才を殺す凡人』でも、「大企業でイノベーションが起きない理由」として、切り口は違えど同じ趣旨のメッセージが書かれていましたので、気になる方はこちらの記事も是非ご覧ください。
抵抗勢力を語るうえでの2本の補助線
では、先ほどから繰り返し登場している「抵抗勢力」には、どんな種類があるのか?
2本の補助線を引いてみます。
抵抗する理由が「ふわっと」しているか「具体的」か
抵抗する理由が「ふわっと」している人は、「何か嫌なんだよね」「よくわかんないけど、今のやり方と変わるのは困るよ」と言って抵抗します。
もしくは「顧客のためを思うと、変えるべきではない」と、それっぽく大義名分をぶら下げて話す人もいます。
一方、抵抗する理由が「具体的」な人もいます。
ふわっとしている人よりは幾分マシなのですが、抵抗する理由が「細かすぎる・枝葉ばっかり」なんてこともあります。
どうやってあるべき姿を実現するか…ではなくて、「どうすれば反対できるか?」を起点に考えいるんじゃないかと勘繰りたくなるとき、ありますよね(笑)
「目に見えて動的」に抵抗するか「水面下で静的」に抵抗するか
目に見えて動的に抵抗する人は、会議の場でハッキリと「No!」と発言する人ですね。
ただ声が大きいタイプもいれば、重箱の隅を楊枝でほじくるような指摘を積み上げて発言するタイプもいます。
一方、水面下で静的に抵抗する人はどうでしょう。
会議中は沈黙している。
しかし、会議が終わると、「ヒソヒソ(あれどう思う?やっぱ反対だよね?)」と周りにささやくタイプや、無言の抵抗をしてくるタイプもいます。
誰が水面下で抵抗しているのか、検知するのに時間がかかるので、少々厄介です。
抵抗勢力マップ-愉快な抵抗勢力たち-
では、下準備が整いましたので、本題の「抵抗勢力マップ」を見ていきます。
①何となく変化は嫌いだから断固反対!「断固ちゃん」
変革の初期に出没しがち。かつ、声が大きめな「断固ちゃん」。
まだ変革の概要をきちんと理解できていないのか、そもそも理解する気がないのかわかりませんが、「今と変わること」に対して強烈な抵抗を示してきます。
このタイプの人は、理解が「ふわっと」していてもできる発言をしてきます。
「そもそも何のためにやるの?」
「この取組みをやるのとやらないのとで、何が違うの?」
…と、一見ごもっともな質問にも聞こえますが、実は相手を攻撃するために質問していることもしばしば。
もしくは、水戸黄門の紋所のように、ここぞとばかりに大義名分を突き付けてくる人もいます。
例えば「顧客第一に考えると、この業務にRPAを導入すべきではない。全て個別化してカスタマイズすべき」といった具合にです。
あるいは、万策尽きると、「あなたはこの業務をやったことがないから、そんな提案ができるんだよ」と言ってくることもあります。
コンサルタントをやっていると、この言葉をよくいただきます。
どのビジネス書にも「固定観念にとらわれない発想が大事」だと書かれています。
だからこそ、門外漢のコンサルタントが雇われるわけですが…
腹の底では「ウチの業務をやったことがないコンサルタントの言うことなんて…」と思われていることも多々あります。
こういった抵抗に対して、時には正面突破でガツンと、時にはご機嫌取りを挟んでみるなど…なかなか手がかかるのが「断固ちゃん」です。
②横槍で重箱の隅を狙い撃つ!「サイドランサー」
次にご紹介するのが「サイドランサー」です。
このネーミングはある人からいただいたもので、気に入っているので使わせてもらいました(笑)
サイドランサーは、さっきの断固ちゃんよりはソフトですが、厄介な特徴を持っています。
それは「重箱の隅、枝葉、各論」を容赦なく突いてくることです。
会議中は「今、そんな個別具体的な議論は必要ないでしょ」と思うポイントを指摘してくる。
あるいはメールでのやり取りでは、「横から失礼します。〇〇の件ですが…」と、これまた絶妙なポイントを取り上げてくる。
まるで「あら探しをしているのでは?」と疑いたくなるような指摘の嵐。
これにはムムッと思うこともあるかもしれません。
しかし、ムムッと思う気持ちをグッと堪える必要があります。
サイドランサーもまた、目の前の既存業務と毎日真剣に向き合って大切に思っているからこそ、重箱の隅を縦横無尽に突いてくるわけです。
ムムッと思う気持ちを制して、まずは「指摘してくださったことへの感謝」を真心を込めて積み重ねていくことが大切です。
「ご指摘ありがとうございますの積み重ね」
これこそがサイドランサーの攻略法です。
③闇インフルエンサー「チクリン」と「ネガキャンマン」
告げ口屋さん「チクリン」
次は水面下シリーズです。
まずは「チクリン」について。
この方は、会議中や全員が入っているチャットグループやメールなど、目立つところでは動きを見せません。
しかし、会議が終わった後などに、こっそりと権力者や発言力がある人のもとに忍び寄り、告げ口をすることで抵抗する。
これが「チクリン」です。
告げ口を聞いた偉い人からの横槍は、まさに青天の霹靂。大ダメージです。
このチクリンによる告げ口を事前に予防するのは結構難しいです。
なぜならば、水面下で動かれるからです。
これといった歯切れのよい攻略法は無いのですが、もし何かできるとすると
- 「告げ口されても問題ない」と言い張れるくらい、隙を見せなず立ち振る舞うこと
- 告げ口が行っちゃいそうな偉い人たちと先に関係構築をしておく
…これくらいであれば、何か努力できるかもしれません。
あることないこと言いふらす「ネガキャンマン」
「あのプロジェクト、イケてないよね。上手く行くわけないよ」と周りの人にネガティブキャンペーンをする人。
それが「ネガキャンマン」です。
…と抵抗勢力として紹介しましたが、個人的には、こういう人はあんまり気にしなくてよいと思います。
変革の成果がきちんと出始めれば、ネガティブキャンペーンなど意味がないからです。
基本的には、ネガキャンをする人の原動力は「嫉妬」です。
変革を推し進める人には、「嫉妬」1つひとつを相手にしている時間はありません。
ネガキャンマンは気にし過ぎないこと。これこそが、ネガキャンマンの攻略法です。
④華麗なスルーパス!「ムッシ」
会議中は特に発言せず(というか、内職をしていることも…)。
それで、いざ変革の実行フェーズに入ったタイミングで、「これお願いしますね」と頼んでも動いてくれない存在。
それが「ムッシ(ただの無視のこと)」です。
まるでガンジーの「非暴力、不服従」のようなスタンスですね。
この「ムッシ」には次の2パターンがあります。
- 単に、変革の内容を理解していないから、協力をしてくれない
- 変革の内容を理解したうえで、意図的に無視している
1については、1対1で話す時間を設けて、面と向かって丁寧に話をすれば、解決に向かうことも多々あります。
2については、私もまだ明確な攻略法を見いだせていません。
以前、2の人をプロジェクトから外したことがあります。
そのときは短期的には上手くいったのですが、その後何度か「ああ、ちゃんとあの人を巻き込んでおけばよかった」と後悔するケースがありました。
なぜ抵抗するのか?
ここまで、「変革を進めたい人の目線」で抵抗勢力たちを紹介してきました。
そこで視点を変えて、変革をされる側、抵抗する側の立場にシフトしてみます。
変革に抵抗したい理由は何なのか?
それは「自己保存の本能を満たすため」「生命を維持するため」です。
- 業務が新しくなると、私の仕事が無くなるのではないか?
- 新しくなった業務に私は適応できるのだろうか?
- 今の業務を変えることは、これまでの自分自身の取り組みを否定されることではないか?
…こうした生存不安が、抵抗勢力の強い強い原動力になります。
これが本当に強いエネルギーでして…どれだけ厄介かは『生命科学的思考』を読んでもらえると、よく理解できるかと思います。
では、どうすれば「自己保存の本能」と戦う方法は何か?
それは、「変わらない選択をした方がヤバいぞ」と、新たな危機感で上書きすることです。
例えば、コロナによる影響はイメージしやすいですよね。
「リモートワークをしない方が危険だ」と、危機感が上書きされることで、今まで全く進まなかったリモートワークが急激に浸透しました。
「危機感の上書き」
これこそが、抵抗勢力をまとめあげる1つの攻略法なのかもしれませんね。
しかし、もっと良い答えがあるはず。
「どうすれば抵抗勢力を攻略できるか?」
人生を通して解きたい1つのテーマが増えました。