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前回、「【コラム】その依頼の仕方で、本当に相手は動いてくれますか?」という記事の中で、「依頼するときに意識しておきたいこと」を書きました。
・依頼するときは、必ず期限をそえる
・相手の予定を把握するために、カレンダーツールを覗いてみる。あるいは、社内ツールがオンラインになっているかを確認する
・相手が普段どんな業務を行っているか、思い浮かべてみる
・「自分が書いた文章で、本当に相手は動くことができるだろうか」「自分だったら、この指示内容で動けるだろうか」と、一度立ち止まって読み返してみる
・「自分が書きたいことではなく、相手が知りたいことを書けているか」と、自問自答する
・自分と相手の権限やパワーバランスを考えたときに、本当にこの言い回しでよいのかを考える
・「相手はこの用語を知っているだろうか」と、相手の目線で文章をチェックする(IT用語や社内用語は特に)
そうすると、次に浮かぶ疑問は
仕事を依頼される側も、気を付けるポイントはないのか?
この問いですよね。
前回の記事は、私の経験則や本で学んだことを書いたのですが、
今回は「コンサル時代の尊敬する上司」に教わった3つのことを書いてみます。
プロジェクトを1度も炎上させたことがない上司から教わった、3つのコツがある
コンサル時代にいくつもプロジェクトを経験したのですが、あえて1名だけ「印象に残った上司をあげよ」と言われたら、私はAさんを思い浮かべます。
何名かから「Aさんは一度もプロジェクトを燃やしたことが無い、マネジメントのプロだよ」と聞いていたので、「いつかAさんと働いてみたいな」と思っていたところ・・・
偶然にもAさんから声をかけてもらい、プロジェクトを共にする機会がありました。
普段は物腰柔らかいAさんなのですが、いざ仕事の場になると
「プロフェッショナルたるもの、必ず納期以内に、期待値以上の成果物を出すこと。同時に、周りにも同じ動きをさせること。さすれば、大概のプロジェクトは、多少は右往左往しても絶対に上手くいく」
この原理原則に則り、自分にも周囲にも厳しく成果を求める方でした。
Aさんにフィードバックをいただいては、Evernoteに書き込む・・・
そんな日々を繰り返していたところ、気づいたらメモが数百行に。
その数百行の中で、何度も何度も出てくるキーワードがあったので、私の頭の整理も兼ねて紹介できればと。
最初に結論を書いておくと、「仕事の依頼を受けたときに意識しておきたいこと」は、次の3つです。
- 目的と完成イメージを「自分の言葉で説明できるレベル」まで固める
- 期日を握る(できれば1.5倍増で)
- 依頼されたら、まず3分だけ手を動かす
①目的と完成イメージを「自分の言葉で説明できるレベル」まで固める
Aさんから頼まれたタスクの進め方について質問しに行くと、よく次のように聞き返されました。
「質問はそれだけ?今の情報で、本当に手を動かせそう?」
「タスクの目的はわかった?じゃあ言ってごらん。この成果物は、誰が受け取って、どんなアクションに使うものなの?」
「今の話、ちゃんと理解できた?じゃあ完成イメージをホワイトボードに書いてごらん」
そして「作業に逃げてはいけない。手を動かす前に、必ず明らかにすべきことがある」とだけ教えてくれました。
「必ず明らかにすべきこと」については、「自分で考えなさい」と言われましたが(笑)
こんなやりとりを数か月繰り返すうちに、自然と身についたことがあります。
目的を納得いくまで言語化しきる
仕事を頼まれたときに、一番最初に確認すべきことは何か?
おそらくほとんどの方が「目的」と答えるでしょう。
ただ、仕事の依頼があるとき、よく「目的」が曖昧な状態がありますよね。
例えば「ちょっとさ、社内のリモートワークの状況を調査してもらえないかな?」と頼まれたとしましょう。
そこで「何のために、リモートワークの調査をすればいいんですか?」と聞き返します。
すごく手厚い方であれば、明確に目的を伝えてくれると思いますが、必ずしもそんなケースばかりだとは限りません。
人によっては「コロナ禍でリモートワークを導入して、しばらく経つからさ。現状把握しときたいじゃない?」など、ふわっとした回答が返ってくることもしばしば。
そういうときに「なるほど、わかりました」と安易に妥協してはいけません。
「そのリモートワークの調査結果は、誰がどんな意思決定をするために使うんですか?」
ここまで食らいつきましょう。
何かの成果物というのは、ほとんどの場合、誰かの次のアクションに繋がっていくものです。
ですから、多少相手を足止めしてでも、相手から嫌だなと思われても、
「自分が依頼された成果物は、誰のどんなアクションに使われるのか?」を握ること。
これが巡り巡って、「相手が心から納得いく成果物」を確実にお渡しすることに繋がります。
相手と自分との間で、共通の完成イメージを描く
目的を握ったあとは、成果物の完成イメージについて認識をすり合わせていきます。
先ほどのリモートワークの調査の話に戻ります。
仮に「社内のリモートワーク調査の目的は、リモートワーク継続の是非を決めること」だとしましょう。
そうすると、次の論点は「リモートワーク継続の是非を決めるためには、何が明らかになっていればよいのか?」です。
もう少し具体化して、書き出してみると、
- 調査の項目は何か?
- 出社時とリモートワーク時で、どれくらい生産性に差が出るのか?(そもそも生産性をどう定義するかも議論が必要)
- 社員はリモートワークをポジティブ、ネガティブ、どちらだと捉えているのか?
- 上記で論点は足りているか?
- どんな手段で情報を収集するか?
- どんな調査結果(グラフや資料)が出ていればよいか?
上の全てを上司と握るのは難しいかもしれませんが、1つでもいいので、隙あらば認識を合わせておく。
この「がめつさ」というか「しつこさ」が大事なんだと思います。
②期日を握る (できれば1.5倍増で)
2つ目は、期日について。
まず、仕事の依頼を受けたときは、その仕事の大小問わず、必ず期日を確認すること。
成果物のイメージや品質については、相手が抱いている期待値とズレる発生する可能性があります。
ですが、期日については、努力さえすれば、必ず期待値を揃えることができます。
なぜならば、日付は世界共通で使われている概念ですから。
成果物の品質ももちろん大切ですが、まずは納期を守ること。
納期を守ることは、信頼残高を積み立てること。
「たかが納期」とバカにせず、どんな仕事に対しても、期日を明らかにするクセを持ちたいものです。
加えて、できれば期日は「1.5倍増」で握りたいものです。
「本当は5営業日で済みそうなタスクだな」と思っても「7営業日待ってもらえますか?」と交渉してみる。
というのも、
- タスクを進めるうえでの関係者が急遽休んでしまう可能性
- 緊急のタスクが割り込んでくる可能性
- 自分が体調を崩す可能性
- 想定よりもタスクの難易度が高い可能性
などが、常にリスクとして付きまとうからです。
繰り返しますが、納期を守ることは、信頼残高を積み立てること。
そのためにも、「守れる約束」だけを約束する。
これが、自分そして相手を守ることに繋がります。
③依頼されたら、まず3分だけ手を動かす
Aさんはよく、「仕事の依頼を受けたら、まず3分だけ手を動かして対応してみなさい」と言っていました。
その意図までは聞けなかったのですが、私が思うに、大きく3つの意味があるんじゃないかと。
1つ目は、「仕事の難易度を見誤らないため」です。
納期が先の仕事が飛んでくると、「来週着手すればいいから、いったん忘れよ」と放置する。
そして、次の週になって「あれ、この仕事、意外と難易度高いかも…」と焦る。
こういうケース、ありますよね。
ですので、3分でいいから、いったん「この仕事を完成させるために、どんな作業が必要かな?」とメモを書きだしてみる。
すると「あ、来週やればいいと思っていたけど、これだけは今週中にやっておいたほうがいい」と気づくことができます。
余裕だと思っていた仕事に足元をすくわれないよう、抜かりなく対応していきましょう。
2つ目は、「仕事を溜めないため」です。
仕事が溜まっていると、人によっては、「あれもやらなきゃ、これも終わってない…」と気になっちゃいますよね。
こういうちょっとしたモヤモヤ感が、ときに「集中力泥棒」となります。
仕事の依頼文に「急ぎでないです/お手すきのときに」と書いてあっても、数分で済むような仕事であれば、その場で処理してしまう。
そうすれば、「溜めなくてもいい仕事」を溜めずにすみます。
3つ目は、「頭の中の無意識を活用するため」です。
この理屈は、「書評『ガチ速仕事術』すべての仕事が2分の1の時間で終わる?」でも紹介した通りです。
東大受験に合格するような優秀な受験生が、試験のときにやること。
それは、「一番難しい問題から目を通すこと」だそうです。
目を通した後は、一番難しい問題は脇に置いておいて、まず簡単な問題を解き始めると。
で、簡単な問題を解いている間に、「無意識くん」には一番難しい問題を考えさせておく
すると、いざ一番難しい問題を解き始めると、「無意識くん」が事前に情報や解き方を整理してくれているので、スラスラ解けてしまう。
難しい仕事が飛んできても、後回しにせず、いったん3分だけ考えてみる。
この仕込みが大事になってきます。
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最後にまとめておきます。
- 目的と完成イメージを「自分の言葉で説明できるレベル」まで固める
- 期日を握る(できれば1.5倍増で)
- 依頼されたら、まず3分だけ手を動かす